【ローマ海保真人】イタリア・サッカー1部リーグ(セリエA)の不正疑惑事件で、同国サッカー協会のスポーツ裁判所の控訴審裁定を下した判事団5人のうちの1人が、27日付の伊紙レプブリカに裁定理由を明らかにした。「甘い処分」の理由について「W杯優勝や1審裁定に対するサポーターの反乱、恩赦をめぐる政治論議などさまざまな要因が影響した」と語っている。裁判関係者が25日の控訴審裁定理由を明かしたのは初めて。
控訴審裁定では、1審裁定で宣告されたフィオレンティナ、ラツィオの2部リーグ(セリエB)降格を撤回。両クラブのセリエA残留を認めるとともに、1審で認められなかったACミランの欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場を認めた。
これらについて判事団の一人のセリオ判事はレプブリカ紙に「裁定には過去2週間で起きたことが影響した」と語った。同判事はイタリア代表のW杯での優勝や、1審の厳しい裁定に対する各クラブの地元市長らの抗議、サッカー界を取り巻く経済的悪影響などに配慮して「穏便な裁定に変えることを決めた」と明かした。
セリオ判事はまた、ユベントスに対し3部リーグ(セリエC1)以下への降格を当初「求刑」した検察側について「裁判を行うのが早過ぎたせいか、起訴理由に十分な立証が欠けていた。起訴の手順が不完全だった。それが問題だ」と批判した。
控訴審はフィオレンティナとラツィオのセリエA残留を全会一致で決めたものの、ACミランのCL出場権はく奪の撤回と、カラーロ前伊サッカー協会会長の「サッカー界4年半追放」(1審裁定)の破棄については「3対2」で意見が分かれたという。
判事団は現在、控訴審の裁定理由をまとめており、8月10日までに正式に公表する方針。
毎日新聞 2006年7月28日