談合の仕切り役は、知事の威光をバックに暗躍していた。4日、競売入札妨害容疑で逮捕された辻政雄容疑者(59)は、佐藤栄佐久・福島県知事の「秘書」の名刺を持ち歩き、土木建築業者を回っていた。佐藤知事が保守分裂選挙を制して初当選した選挙(88年)で奔走して以来、功労者の一人とされた辻容疑者。太いパイプに期待して、地元業者がこぞって受注調整を依頼したゆがんだ構造に東京地検のメスが入った。
「地域担当秘書」。そう書かれた名刺を持ち歩いた辻容疑者。知事の出身地、福島県郡山市で会社を経営し、知事が理事長を務めた地元青年会議所の後輩として、88年の知事選を応援した。劣勢との下馬評を覆し、約22万票差で圧勝。知事と親しい元県土木部幹部は「あの活躍で彼は株を上げた」と振り返る。
「選挙から数年後、建設業界で口利きをしているという話が知事の耳にも入っていた」と証言する知事側近もいる。前回の知事選で応援したある建設会社社長は「あれだけ露骨な口利きを知らなかったはずはない」と不信を募らせる。建設業者には「知事とゴルフをした」などと深い関係をちらつかせ、会津地方の業者は「本当に力があるように思えた」と言う。
一方、知事は先月22日の記者会見で「県発注工事は公明正大に展開している」と談合疑惑を否定した。
毎日新聞 2006年9月5日