初公判のため弁護士らとともに東京地裁に入る堀江貴文前社長(手前)=東京・霞が関で4日午前9時29分、佐々木順一写す
証券取引法違反(偽計・風説の流布、有価証券報告書の虚偽記載)に問われたライブドア(LD)前社長、堀江貴文被告(33)は4日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)の初公判で「起訴状のような犯罪を行ったこともないし、指示したこともない。起訴状は最初から悪意に満ちた内容で、心外です」と無罪を主張した。弁護側も対決姿勢を示す意見書を読み上げた。検察側は冒頭陳述で、堀江前社長が「時価総額の増大」を至上目標に掲げ、事件を主導したと指摘。前社長による具体的な指示や了承を詳述した。
公判は11月28日まで計26回開かれ、順調に進めばそこで証拠調べを終え、その後、検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論が行われる。早ければ来年2月にも、判決が言い渡される見通し。
堀江前社長が公の場に姿を見せるのは4月27日の保釈以来。黒っぽいスーツにノーネクタイで同地裁に現れた堀江前社長は、法廷では青いネクタイを締めた。
検察側冒頭陳述によると、堀江前社長は03年10月、株式交換で企業買収し、交換したLD株をダミーファンドに買い取らせて売り抜け、売却益を本来許されない連結売り上げ・連結利益に計上する仕組みについて、前財務担当取締役、宮内亮治被告(39)=分離公判中=らから説明を受けた。10億円程度の売却益を見込めると聞き「そんなもうかっちゃうの。そりゃーすごいねぇ。じゃあ、予算にも乗せなきゃ。上方修正だねぇ。その金額、乗せといて。乗せれるだけ乗せないと。大丈夫だよ。平気だよ」と了承し、連結経常利益の予想値の上積みを指示した。
04年5月には、予想値をさらに50億円に上方修正するよう指示し、宮内被告らに反対されると「いいんだよ、強気、強気。ケイツネ(経常利益)50(億円)の(方)がかっこいいじゃない。大台乗ったって感じでいいじゃん」と強く指示した。
しかし、予想値達成は困難で、宮内被告らから買収予定の2社への架空売り上げ計上を提案されると「やるしかないだろう。やりきるしかないよね」と指示。発覚しないよう虚偽の証拠類を作成することを前代表取締役、熊谷史人被告(28)=同=から報告されると「頭痛いなぁ。まぁ、熊ちゃん、頑張って」と応じた。
関連会社ライブドアマーケティング(LDM)の赤字についても「こんな数字じゃリリース(公表)できないでしょ。いろいろ言わずに、とにかく早くやれよ。うちのメディアに広告で付ければ簡単にできるだろ。とにかく黒字にしろよ」と粉飾を指示した。
これに対し、弁護側は冒頭陳述で、起訴事実とは別の企業買収に伴い、ファンドから1億6000万円余が行方不明になっていると指摘。「ダミーなら多額の資金が行方不明になるはずがない」などとファンドには実体があり、LDの支配下になかったと主張し、検察側の構図を否定した。
さらに、起訴事実を認めている宮内被告について「上司と部下(の関係)ではなく実質的には対等の立場にあった」と指摘し、事件に問われた出来事は宮内被告の主導だったと主張した。【佐藤敬一】
■起訴事実 堀江前社長は宮内被告らと共謀し、ライブドアの04年9月期連結決算で、自社株売却益約37億6000万円を本来は認められない売上高に計上したほか、後に子会社となる2社への架空売り上げ15億8000万円を計上し、計53億円余を粉飾決算した=有価証券報告書の虚偽記載。同年10~11月には、関連会社ライブドアマーケティングの株価をつり上げるため、企業買収や業績状況で虚偽発表をした=偽計、風説の流布。