福島県発注工事を巡り、競売入札妨害容疑で逮捕された空調設備会社社長、辻政雄容疑者(59)が、談合容疑の流域下水道整備工事の入札に参加した業者に対し「おれのことは言うな」と口止め工作をしていたことが分かった。また、一緒に逮捕された県内大手の土木建築会社「佐藤工業」(福島市)営業部長、八巻(やまき)恵一容疑者(47)が逮捕前、偽名を使って入院していたことも判明。2容疑者が、あの手この手で捜査の手から逃れようとした実態が浮かんだ。
関係者によると、辻容疑者は今年8月、流域下水道整備工事の指名競争入札(04年8月20日)に参加した複数の業者が、東京地検特捜部から事情聴取されたとの情報を得て、業者側の担当者らに直接電話をかけ、自分のことを話さないよう口止めした。談合は東急建設(東京都渋谷区)の東北支店(仙台市)などで行われ、工事は同社と佐藤工業の共同企業体が落札したことから、辻容疑者は特に、東急建設の担当者に強く口止めを迫ったという。
辻容疑者は佐藤栄佐久・福島県知事の支援者で、知事の威光を背景に県発注工事の入札などで、談合の仕切り役を務めたとされる。逮捕容疑については全面否認し「東急建設も知らない」などと供述していることが既に明らかになっている。
一方、特捜部は、偽名で入院していた八巻容疑者について、会社上層部をかばっているとの見方を強めており、上層部の関与の有無を重点的に調べている模様だ。辻容疑者らの逮捕に併せて自宅を家宅捜索し、既に事情を聴いた佐藤工業の佐藤勝三会長(66)については7日、4度目の聴取を行う。
毎日新聞 2006年9月7日