福島県発注の公共工事をめぐる談合事件で、入札に参加した建設業者が東京地検特捜部の調べに対し、財団法人「福島県建設技術センター」から入札に関する情報を聞き出したうえで、予定価格に近い金額で落札を繰り返していたと、供述していることが分かった。同センターでは、特捜部の家宅捜索を受けた元同県土木部長が10年以上、理事(理事長を含む)を務めていた。特捜部は、県側と同センターが業者と癒着した官製談合の疑いもあるとみて、調べを進めている模様だ。
同センターは県や地元市町村の出資で78年に設立。県などが発注する公共事業に関して、設計や調査を受託したり、研究や相談を行うのが主な業務。このうち県からの受託事業は、04年度で366件、7億2987万円余に上る。
建設業界関係者によると、県の工事の入札に参加する業者は、同センターの受託事業のうち、設計・積算業務に着目。本来、極秘のはずの積算の数字を同センター側から入手し、これをもとに予定価格を算定したうえで、各社の応札価格を決定していたという。仕切り役は特捜部に競売入札妨害容疑で逮捕された同県郡山市の空調設備会社社長、辻政雄容疑者(59)が務め、落札業者が謝礼を支払ったこともあったという。
同センターでは、4日夜に自宅を家宅捜索された江花亮・元県土木部長(70)が89~00年に理事を務めるなど、歴代土木部長OBが要職を占め、理事と土木部長を兼任するケースもあった。さらに理事をチェックする評議員も土木部幹部が兼任していた。このため、特捜部は同センターを介在させて県側が談合を主導する官製談合だった疑いもあるとみて、関係者の事情聴取を進めているとみられる。
一方、江花元部長は毎日新聞の取材に対し「民間の設計レベルが低すぎたので、県の出向者で業務をしていた。公共工事の積算はするが、情報漏れはなく、談合なんてとんでもない」と疑惑を否定した。
毎日新聞 2006年9月5日