政府は10日、対外支援の指針となる政府開発援助(ODA)大綱の改定を閣議決定した。名称を「開発協力大綱」に改め、非軍事分野での他国軍への支援、所得水準が高い島しょ国への協力、民間投資との連携などODAの枠に入らない取り組みも明記。新たに「国益の確保に貢献する」との表現も加えて、日本にとっての戦略的重要性を踏まえて対外援助を行う方針を鮮明に示した。
ODA大綱の改定は1992年の策定から2回目で2003年以来。ODAに限らない幅広い対外協力を示す概念として、新たに「開発協力」という言葉を採用した。国際的にはODAは公的資金による途上国援助のみを指し、力点は貧困削減などにある。新大綱ではこれに加え、日本の安全保障や経済成長に役立つ取り組みを重視する姿勢を前面に打ち出した。
安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の考えや13年に閣議決定した「国家安全保障戦略」の内容も踏まえた。民主化や法制度整備、人権分野での支援にODAを積極的に活用するとした安保戦略を受け、新大綱では自由や民主主義といった「普遍的価値の共有」を対外協力の重点課題にした。国連平和維持活動(PKO)との連携についても触れた。
従来の大綱から「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」との内容を踏襲した上で、軍や軍人が関わる支援について「実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」と新たに明記した。軍が関わる支援は軍管轄の病院の改修支援などの一部の例を除いて避けてきたが、災害支援や気象、海上保安などの非軍事分野でも軍の役割が無視できないとの判断だ。
これまで原則として支援対象ではなかった1人当たりの所得が一定水準以上の国に対しても、「各国の開発ニーズの実態や負担能力に応じて必要な協力を行っていく」とした。ハリケーン被害に苦しむカリブ地域の島しょ国、廃棄物処理など都市課題を抱える中東湾岸諸国を念頭に置く。国連改革などの国際政治やエネルギー安全保障で重要な国と結びつきを強めるのに役立てる狙いだ。
途上国の資金の流れで民間資金が公的資金を上回るようになっていることも踏まえ、民間投資の役割についても言及。政府の支援でインフラなど投資環境を改善し、民間企業の投資を促すことが「(相手国の)成長と貧困削減につながっている」と評価。日本経済の力強い成長にもつながるよう、中小企業を含む企業や地方自治体、大学との連携を強化するとの内容を盛り込んだ。