中国の不動産開発会社、大連万達集団(ワンダ・グループ)が、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長のおいが率いるスイス企業インフロント・メディアを買収する権利を獲得した。インフロント社はいくつかの大きなスポーツイベントの放映権を販売している。
インフロントは企業買収を手がけるブリッジポイントが2011年から保有する。ワンダによるインフロント社の買収は今週発表される見通しで、複数の関係者は金額が10億ユーロを超えるとみている。14年12月にあった(インフロント社を買収する権利の)入札でワンダは優先権を得ていた。フィリップ・ブラッター氏は引き続きインフロントの社長兼最高経営責任者(CEO)を務める。
■名門サッカーチーム株式を取得したばかり
アトレチコ・マドリードとの署名式に出席したワンダ・グループの王健林董事長(左)(1月20日、北京)=ロイター
上海に本拠を置くワンダは、従来の商業用不動産事業に加え、スポーツをはじめとするレジャーやエンターテインメントの分野にビジネスを広げている。インフロントの買収はそのなかでの最新の案件だ。ワンダは数週間前、スペインの名門サッカーチーム、アトレチコ・マドリードの株式の20%を取得したばかりだ。ほかにも米映画館チェーンのAMCエンターテインメント、英高級ヨットメーカーのサンシーカー・インターナショナルなどを傘下に加えた。
ワンダの基幹事業は中国でも最大手の一つに数えられる商業用不動産ビジネスだ。14年の販売実績は1600億元で、不動産開発分野では万科企業、緑地集団に次ぐ3位だった。最近では実際の店舗で買い物をするのでなくインターネット通販を利用し、映画やエンターテインメントへの支出を増やす、といったように中国の消費者の行動に変化が見え始めている。ワンダはこうした状況を反映して(ニーズが高まる)事業分野における株式の保有高を増やしている。
インフロントは最近の2大会についてFIFAワールドカップの放映権をアジアで販売した。さらに15年から22年までの放映権をアジアの26地域で売る権利を保有している。
02年からFIFAワールドカップの中継を担当してきたHBSはインフロントの関連会社だ。ワンダはインフロント買収により、イタリアのセリエA(1部)リーグのサッカーの試合、ベルリン・マラソンをはじめとする様々なイベントの放映権を獲得できる。
ブラッター氏はしばしばFIFAとの関係を巡る疑惑に直面せざるをえなかった。だが、縁故主義だとの非難に対し同氏は否定を繰り返してきた。
ワンダは、スポーツ利権に関する中国市場でのインフロントの存在感にも魅力を感じているのかもしれない。インフロントは14年に中国のプロバスケットボールリーグと6年間の契約を締結した。インフロントは中国バスケットボール協会との付き合いが長く、中国リーグのブランド化、ビジネス、世界的な企業とのスポンサー契約を支援してきた。
中国のインターネット大手、騰訊控股(テンセント)は1月、米プロバスケットボール協会(NBA)と、NBAの試合を中国でインターネット配信する5年契約を結んだ。
By Joseph Cotterill, Arash Massoudi & Roger Blitz
(2015年2月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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