「日本人は均質」という常識は、経営者やリーダーの目を曇らせ、すでに企業内で広く進行している多様性(ダイバーシティー)を見過ごす罠になっているかもしれない。会社の中には、バブル景気をおう歌した社員もいれば、就職氷河期の中でやっと就職し、不景気しか知らない社員もいる。多感な時期に東日本大震災を経験し、人生観に影響を受けた人もいる。世代間の意識のギャップは案外大きい。 こうした意識のずれは昔から常にある問題だが、それぞれの社員が育った社会環境が「めまぐるしく変化」してきたため、そのずれがより大きくなってきている。マネジメントソリューションズの高橋信也社長は、「社員の価値観は5歳ごとに違うと感じる」という。そんな多様な社員たちが同じ目的・目標に向かってベクトルをそろえ、皆が「腹落ち」して取り組めるようなダイバーシティーマネジメントに、経営者やリーダーはもっと意識を向けるべきだと高橋氏は語る。(日経BizGate) ――高橋さんが2005年に設立したマネジメントソリューションズは、プロジェクトマネジメント支援サービスを手掛けている。今、マネジメントの観点から、最も注目していることは?
いろいろあるが、ダイバーシティーマネジメントが一番気になっている。プロジェクトマネジメントの世界でもそうだが、企業全体のマネジメントにもかかわる話だ。 私は、コンサルタントだった時代から通算で60社以上の企業とお付き合いし、マネジメントソリューションズを創立してからの9年間でも40社くらいのクライアントとお付き合いしてきた。いろいろな企業のさまざまな課題を見てきた中で、最近特に、国内でもダイバーシティーマネジメントが大事だと感じ始めている。当社の社員は70人ほどだが、そこを見るだけでも多様性(ダイバーシティー)を感じざるを得ないからだ。 ――高橋さんは社長として若いほうだが、それでも価値観の違いを感じるのか。 私は今42歳だが、私より少し下の35歳くらいだと、もう価値観が変わってくる。5歳刻みで「仕事をする、働く」ということに対する世代の価値観が少しずつ異なっていると思う。 [NextPage] 私のような40歳くらいの世代では、まだITバブル(1990年代末)の影響も残っていて、お金を稼ぐとか、会社を大きくするとか、世の中で名を上げるといったことでモチベーションを高めていたと思う。もちろん、それを実践して挫折した人も多いだろうが、チャレンジして人生をより良くしていこうという意識がある。私より若い世代にもそういう感覚はあるはずだが、そう考える人の割合が違うと思う。 たとえば20代後半の社員を見ていると、働くモチベーションは高いのだが、とはいえ、ほかの世代のように共通する感覚・意識を一言で表しにくい。働くことの意味合いが人によってかなり違うからだ。ある人は食べていくため、ある人は出世のため、ある人は将来独立するため、そのほかにもいろいろある。 多感な10代に過ごした経済・社会環境が全然違う さらに若い20代前半の社員になると、より「守り」に入っていく雰囲気が感じられる。彼ら・彼女らが心の中に抱える「漠然とした生活の不安」は、40代以上が想像する以上に大きいようだ。詳しく聞いてみると、年金問題への不安や、多感な10代に経験した大地震への恐れなどが、私たちの世代よりもっと大きな影響を与えている。だから彼ら・彼女らは、「とにかく今を楽しくしたい」と考える傾向が強いと感じる。 人材育成面でも、20代前半には「ほめて伸ばす」タイプが多いと言われているし、自分から「ほめられたい」と口にする。40代以上なら自分から「ほめられたい」とは言わないと思うのだが、今の20代前半にはそういう心理もある。 とにかく、年齢が5歳違うと、働くことに対する価値観が異なると強く感じる。この20年は、特にものすごいスピードで経済や社会環境が変わってきたので、「そこで多感な時期を過ごした影響は非常に大きい」という前提で組織マネジメントをしていかないとダメだと思う。 自分たちの20代の頃を思い出しながら「自分はこういうふうに育ったな」という経験をもとに語ってはいけない。「自分と同じ年齢になれば同じように考えるようになる」と思ってもいけない。彼ら・彼女らの置かれた環境や価値観や思いをしっかり受け止めたうえで、こちらの思いを語らなければならないと感じている。 ――5歳ごとに価値が違っているとしたら、そのギャップを埋めていくのは、決して簡単ではなさそうだ。 マネジメント側の思いを押し付けずに、価値観のギャップを埋めていくには、逆説的だが「常に自分自身を振り返る」必要がある。自分たちの経験してきた環境に起因する価値観を常に自覚して、それを押し付けないようにすることが大切だ。その一方で、仕事の本質的な部分は、自分たちの経験をしっかりと伝えていかなければならない。 [NextPage] ただし、それだけではダイバーシティーマネジメントにならない。 米国に会社を作り、米国で暮らし始めて、ダイバーシティーマネジメントの大切さをさらに強く意識するようになった。私の子どもたちは米国の公立小学校と公立中学校に通っているが、小学生にも自分の意見をきちんと述べるように指導されている。米国はダイバーシティーを前提とした社会を構成している。個々人がどう考えているのか、一人ひとりが自分の口で言うことから始まる。 そして、多様な意見をまとめ上げていくのが米国流のリーダーシップであったり、米国流のマネジメントであったりするのだと思う。振り返って日本のマネジメントは、これまで同質の価値観や同質の経験を暗黙の前提にしたものだったはずだ。 「指示されたら、やるでしょ」という偽りの"あうんの呼吸" ダイバーシティーマネジメントの世界では、まず「何のためにそれが必要なのか」をお互いがしっかり理解しておかないとメンバーが腹落ちしない。腹落ちしなければ、期待する行動をしてくれない。 日本の企業なら、上司がレポートの作成を指示すれば、部下は素直にレポートを書くだろう。「指示されたら、やるでしょ」と、目的を全く共有せずに、レポートすることを当たり前のことと考えてしまう。 こういう「腹落ちしていないけれど、やっている」「腹落ちさせずに、やらせている」という話は日本企業の現場でよく起きているのだが、何となく皆気づかないのか、気づきたくないのか、あいまいなままで仕事をしている。 ――そうすると、若手からベテランまで皆が腹落ちできるようなコミュニケーションが求められるわけだが、高橋さんはどのようにしているか。 当たり前のことを繰り返すが、価値観の多様性を「腹の底から」受け入れられなければいけない。これって、頭の中ではそう思っていても、気持ちの中まで落とし込むのは、なかなかできないと思う。 日本企業が海外のプロジェクトでコミュニケーションがうまくいかないのも、根っこのところで多様性を受けとめきれていないからだ。 [NextPage] 社内では、コミュニケーションの場をどう作るかが大事だと考えている。意外と、20代・30代の人たちは飲み会とか合宿のような人付き合い、人と人が会って話すコミュニケーションが好きみたいだ。どうやら、そういう機会が学生時代の部活・サークルでそれほど活発ではなかったらしく、私の世代と比べると「あっさりしている」と感じるくらいで、だから飲み会や合宿などに興味があるのかもしれない。 ただ、別の見方をすると、LINEなどのソーシャルメディアでは活発にコミュニケーションをするが、それはあくまでもテクノロジーを介したつながりであり、実は本当の人間関係づくりという点で経験が少し足りないのかもしれない。そういう前提でコミュニケーションを考える必要がある。 意見を出し合うにはダイアログ(対話)が有効 コミュニケーションの場としては「ダイアログ(対話)」を意識している。こちらから一方的に話すのではなく、相手から話を引き出すということだ。たとえば、週末を使って、社員(希望者)を集め、会社の今後について課題や疑問、意見を話し合う会を開いている。冒頭、私からは何も話さない。その代わり、「今日はどんな期待を持ってこの場に参加したのか、一人ひとり話してほしい」というところから始める。 最初はだれも発言せずに様子を見ているのだが、そのうちポツポツと話が出てくる。そこは、私がファシリテーターとなって話を引き出していく。そうこうするうち、若手の教育をどうしていくとか、会社のブランディングをどうしていくとか、どういうお客さんとどう付き合っていくべきかなどを話し合う場ができる。 その場で引き出したかったことは、「各人がどういうふうに考え、それぞれの意見にどういう違いがあるか」をお互いに理解することだ。例えば、昨年、あるプロジェクトで残業が多すぎて健康を損ねた社員がいた。経営者として、そのお客さんとは取り引きをやめる判断をしたのだが、そのお客さんとどう付き合うべきかについて、本当にいろいろな意見が出た。「負荷が高すぎる環境の中でこそ得られる経験もあるし、場数を踏み、修羅場を経験することも成長につながる」という意見の人もいれば、「いや、健康を害してまで経験を得るというのは根性論なのではないか」「そもそも無茶な残業をなくすために、業界構造そのものを変えていくべきだ」とする意見もあった。 対話が盛り上がり、土曜日の午後1時にスタートして、結局夜の7時ごろまでずっと議論をしていた。途中休憩もほとんど無しでだ。 [NextPage] いろいろ言いたいことはあっても「黙っておく」、という姿勢の人も少なくないが、長い時間をかけて引き出せば、良い会話、良いダイアログが生まれる。ダイバーシティーマネジメントのためには、皆から話を引き出すことがとても大切だと思う。まずは、異なる意見をぶつけ合うことが必要で、そのための雰囲気づくりも欠かせない。 話を引き出し、多様な意見をまとめる「技術」の訓練を ただし、欧米と比べれば、日本では自分の意見を言う教育をあまりしていない。しかも、感情的ではなくて、論理的かつ明確にものごとを述べるスキルを学んでいない。それを前提とした上で、異なる意見をぶつけ合う場を作るには、リーダーのファシリテーションが大切になる。 大した意見でなくとも「とにかく言うことが大事」という雰囲気をファシリテーションによって醸成する必要がある。異なる意見を言った人が損をする、嫌な気持ちになるような場を作ってはいけない。感情的にならないように、話の流れをリードすることも欠かせない。 うまく話を引き出せれば、いろんな意見が出る。その結果として、異なる意見が出すぎて、結論を出すのが大変になるという面もある。うれしい悲鳴だが、そういう場面でもリーダーのファシリテーションが必要になる。 これまで日本でファシリテーションが重要視されていなかったのは、言葉で意見を出し合ってディスカッションする雰囲気が足りなかったからだろう。ファシリテーションを「難しい」と感じる人も少なくないと思うが、ファシリテーションは「技術」なので、学べば誰でも身に付けられる。 |
もう「日本人は均質」にあらず? 静かに広がる世代間ギャップ
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