【ワシントン=吉野直也】米ワシントンで開かれている過激派対策を巡る閣僚級会合は19日、60カ国超が参加し、テロ拡散を防ぐ行動計画を盛り込んだ共同声明を採択し、閉幕する。これに先立ちオバマ米大統領は演説で「過激主義に結束して立ち向かうために我々はいまここにいる。結束が揺らいではいけない」と表明した。
17日から始まった会合は19日が最終日。オバマ氏は「テロ組織のゆがんだ思想やイスラム教を悪用しようとする試みと対決しなければならない」と強調。「西側諸国がイスラム世界と戦争をしているというのは醜いウソだ。経済的、政治的不満がテロリストに利用されている」と訴えた。「イスラムの指導者らは過激思想を後退させる必要がある」と述べ、宗教指導者らの協力も求めた。
同日に採択する共同声明でも中東の過激派「イスラム国」の打倒に向けた結束を促すとともに、過激思想に感化された若者ら「自国育ち」のテロ阻止のための情報共有を打ち出す見通しだ。
テロ情報の共有の参加国は英国やフランス、ドイツ、デンマーク、オーストラリア、ロシア、トルコ、ヨルダンなどで、国連や国際刑事警察機構(ICPO)とも協力する。民間航空機の乗客名簿の交換に加え、国境警備やテロ対策の手法も擦り合わせる。
イスラム国には約100カ国から2万人超が流入したとされる。過激思想に感化され、母国でテロを起こす危険性も高まっている。米政府が渡航者情報の共有などを急ぐのは、類似のテロ事件を防ぐには、各国との連携強化が不可欠との判断からだ。
日本から閣僚級会合に参加した中山泰秀外務副大臣は演説で、拘束した日本人2人を殺害したイスラム国に「非道・卑劣極まりないテロ行為は言語道断の暴挙であり、強く非難する」と力説した。同時に「一個人や一組織がIT(情報技術)を使って国家に挑むという21世紀の新しい戦いが始まっている」と述べ、「暴力的過激主義に立ち向かわなければならない」と呼びかけた。
さらに「穏健な中東諸国への人道支援を拡充していく方針であり、テロと戦う国際社会において日本としての責任を毅然と果たしていく」と語り、中東・アフリカ地域のテロ対策のために国際機関を通じた約1550万ドル(約18億4000万円)の支援を明らかにした。