菅義偉官房長官は19日の記者会見で、安倍晋三首相が今夏に打ちだす戦後70年の談話について議論する有識者会議のメンバー16人を発表した。談話に先立ち報告書をまとめ、首相に提出する。政府は談話の「参考」にする。中国や韓国には保守色の濃い談話になるのではないかとの警戒感が強い。政府はメンバーを各界から幅広く起用し、バランスに腐心した。
25日に初会合を開き、互選で日本郵政の西室泰三社長が座長、国際大の北岡伸一学長が座長代理に就く見通し。首相は新談話の発表に意欲を示してきた。菅長官は「日本がどのような国になっていくか、世界に発信できるものを英知を結集して書き込んでいきたい」と述べ、未来志向の視点を重視する意向を示す。
座長に就く西室氏は日中両国の有識者でつくる新日中友好21世紀委員会の日本側座長を務め、中国政府の要人らとパイプを持つ。中東を含めアジアに軸足を置く学者や外務省OBが入り、女性も3人起用。多様な意見に耳を傾ける態勢とした。
安倍色もにじむ。北岡氏は安全保障に関する懇談会でも座長代理を務め、昨年5月、安倍氏の持論に沿った形で集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更の提言をとりまとめた。今回も懇談会の議論を主導する見通しで、首相の主張を反映した報告書になるとの見方がある。
中西輝政京大名誉教授は中国や韓国に厳しい態度で臨む保守派の論客として知られ、第1次安倍内閣以来の首相のブレーンとみられてきた。外務省OBの宮家邦彦氏も第1次政権下で昭恵夫人の外交活動などをサポートする首相公邸連絡調整官を務めており、かねて首相の信頼が厚い。
菅長官は「談話を書くことが目的ではなく、政府が談話を検討するにあたって意見をうかがう意味で設置した」と語る。「侵略」や「反省」といったキーワードをそのまま踏襲することに首相は慎重だ。政府高官は「談話はあくまでも首相の責任でつくる」と強調する。