政府は20日、日本政策投資銀行と商工組合中央金庫の完全民営化を先送りする内容を盛り込んだ政投銀法と商工中金法の改正案を閣議決定した。同日中に国会に提出する。政府は2015年度から少なくとも10年間、政投銀株の2分の1以上を保有する。商工中金株も当面持ち続ける。現行法で15年度から5~7年後としてきた完全民営化の時期も明示を見送った。
政府はこれまで、保有株をすべて手放す完全民営化の時期を法改正によって2回先送りした経緯がある。時期を明示しないのは今回が初めてで、完全民営化のめどは立たなくなった。
改正案では金融危機や自然災害などが起きた際、政投銀に中小企業の資金繰り支援を義務付ける。民間金融機関が同じ業務ができる体制が整うまでは政投銀株を3分の1超を保有する。政府が3分の1超を保有し続ける期間は改正案では明示していない。
完全民営化を先送りしたのは政府にとって政投銀が経済対策などの際に一般会計の枠外でお金を自由に使える便利な存在だからだとみられる。リーマン・ショック後の中小企業への資金繰り支援や福島第1原子力発電所事故後の東京電力への巨額融資などで、民間に取れないリスクを肩代わりする役割が再認識された面もある。半面、公的マネーが民業を圧迫しているとの批判も根強い。