専業主婦Aさん(31)は、会社員のご主人(30)の月収30万円のうち9万円近くを積み立てています。「保険料などは年間分をまとめて払った方が安くなるから」とお金に細かいご主人の意向で必要額を準備しているほか、金利が高めのインターネット専業銀行に定額を預金。マイカーも「ローンだと金利がもったいない」と一括払いで中古を買うなど計画的で堅実な家計のようですが、実は月3万円超の赤字で、思うようにお金がたまっていません。
必要な生活費も把握しないまま身の丈以上の貯蓄に走れば、行き詰まることは目に見えている
積み立てているのは、まず1~2年分をまとめ払いするために現金で用意しているタンス預金。年払い割引がある生命保険料と自動車保険料、NHK受信料のほか、毎年の固定資産税、2年に一度の車検費用で計3万9470円になります。自動車保険7万円は月割りで5833円、車検費用9万3300円は同3888円というふうに、1円単位できっちり計算しています。
もう一つのネット銀への預金は計5万円を3行に分けて自動積み立て。特に目的があってためているお金ではなく、「将来何があるか分からないし、貯蓄は多いに越したことはないから」との不安からAさんが始めたそうです。
確かにボーナスやクレジットカードに安易に頼るより、必要だと分かっている出費を月々の収入から積み立てたり、一定額を貯蓄に回したりしたうえで生活が成り立てば理想的です。ところがAさん一家の場合は、ほかに住宅ローンが9万円超、3歳の息子さんと6カ月の娘さんの学資保険が1万6000円かかっていますから、収入のうち20万円近くが固定されている状態。生活費は残りの10万円ほどでやりくりしなければいけません。
相談を受けて生活費を洗い出してみると、食費や水道光熱費、通信費をはじめ13万円以上必要でした。これでは赤字になるのも当然です。Aさんは結局、足りない分を積立預金からおろしており「今月もうまくやりくりできなかったと落ち込むし、お金を細かく管理するのはストレスがたまる」とのこと。ご主人も「妻の笑顔が減った」と心配しています。
必要な生活費も把握しないまま「一括払いが得」「何かあったときのために」と身の丈以上の金額を蓄えた揚げ句、お金が足りずに取り崩す――。Aさん夫妻は毎月こんな残念なやり方を繰り返していることになります。そして、たまらない焦りや責任感を一身に背負っているのは、実際にやりくりしているAさんなのです。
積み立てと生活を両立するための家計改善法を、Aさん夫妻と一緒に考えました。まずネット銀への積立預金は確実に続けられる額として、2行で1万円ずつに減らしました。毎月取り崩していた3万円分は生活費に充て、余ったら預金に回す形にしたのです。学資保険は、まだ生まれて間もない娘さんの分を解約し、8000円に半減しました。
次に生活費です。通信費はAさんの携帯電話を格安SIMに切り替えることで4割にあたる6000円を削減。水道光熱費は初期投資してLED電球と節水シャワーヘッドを購入し、1000円ほど安くできました。
もともと無駄遣いがある家庭ではなかったので、見直した費目はこれら4つだけですが、支出は計4万5000円減りました。赤字は解消し、積立預金プラスアルファの貯蓄が続けられそうです。
金銭感覚がルーズなのは困りますが、Aさんのご主人のように勘定が細かすぎ、かつその管理を奥さんに強いるのは気の毒です。一方で目的も金額の根拠も曖昧なまま「少しでも貯蓄は多く、金利は高く」という程度の感覚で積み立てを欲張ったAさんにも問題がありました。
1月1日付「地味だけど差がつく お金たまる家計への一歩」でも触れたように、お金を着実にためるうえでは具体的な目標が大事です。家計を構成する夫婦や子供たちとお金の使い方を日ごろから話し合ったり、収支の状況を共有したりすることも欠かせません。Aさん夫妻のように性格やお金に対する考え方に違いがあるケースもあるでしょうから、押し付けではなく家族みんなで無理なく続けていける柔軟性も考慮していく必要があるでしょう。
「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は3月11日付の予定です。