テクノロジーの世界では1年もあれば情勢は大きく変わる。しかしこの直近の12カ月は近年でも相当驚くべき興奮するような変動が起きた。マイクロソフトとグーグルの立場が入れ替わったのだ。
マイクロソフトのナデラCEO。自身初となる投資家向け説明会で(2014年12月3日、ワシントン州ベルビュー)=ロイター
最近の状況を私はこう見ている。2015年、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が率いるマイクロソフトは進歩的でオープンなウェブサービス企業になった。対照的に、グーグルは旧態依然の収益構造にしがみつき、手当たり次第に打ち出すプロジェクトが有言不実行になっている現状を見ようとしていない。
■グーグルがマイクロソフト化した背景
グーグルの収益の柱である広告と検索エンジンはまさに、ウィンドウズとオフィスのようになっている。ソーシャルメディア内での照準を絞った広告戦略やアプリごとにジャンル分けされた(ネット社会の)影響で、どちらの柱も牙城を崩されている。利用者の情報やニーズはグーグル検索ではなくソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブック、ツイッター、スナップチャット、そして写真共有サービスのインスタグラムの中にあふれるようになったし、ウェブで検索する代わりに特定のアプリを利用することが増えてきた(例えば、天気をアプリで確認するといった具合だ)。
グーグル本社。2014年10~12月期決算で最高益を出したグーグルだが、投資家の期待を下回った。広告事業は激しい競争にさらされている=AP
この連鎖反応は大きい。グーグルアドセンス(グーグルのネットワーク広告。ウェブサイトの内容に関連する広告を表示する)の勢いは衰えており、グーグルの検索エンジン市場でのシェアは過去7年間で最低水準にある。かつてのマイクロソフトにとってのウィンドウズとオフィスの位置づけとまるで同じように、グーグルは広告と検索エンジンを収益の2本の柱として明らかにしがみついているが、その将来には引き続きゆっくりとした下落傾向が待っているだけで、そこから逃げ道もない。
さらに言うと、グーグルはかつてのマイクロソフトと同じ過ちを犯そうとしているようだ。つまり、モバイルの優先順位を下げていることだ。
かつてコンピューター業界に君臨していたマイクロソフトだったがウィンドウズの進化が鈍くなったように、グーグルもモバイル分野で同社の基本ソフト(OS)「アンドロイド」に安住してしまっているようにみえる。