東京電力福島第1原子力発電所の汚染水問題が再燃している。敷地内から放射性物質を含む水が長期間にわたって海に流れ出ていることが発覚したからだ。適切な情報開示を怠った東電の対応に批判が集中。汚染水対策として予定していた地下水の海への放出も、仕切り直しを迫られる。
原子力規制委員会との臨時会議に臨む東京電力の広瀬社長(27日午後、東京・六本木)
「大変なご不安を与え、申し訳ない」。27日、原子力規制委員会との会合で、東電の広瀬直己社長は陳謝した。規制委側は「深刻に反省しなければいけない」(田中俊一委員長)として再発防止の徹底を求めた。
問題となったのは2号機の「大物搬入口」の屋上にたまっていた汚染水。事故時に飛び散った放射性物質を含み、雨水などに混じって排水路から港湾外へ漏洩していたことが24日に明るみに出た。原子炉建屋内にある汚染水に比べると濃度はきわめて低いが、法令基準を10倍程度上回る。
東電は昨年4月に流出を示すデータを把握していた。原因を突き止めてから公表するなどを理由に、きちんと説明してこなかった。
全国漁業協同組合連合会の岸宏代表理事会長は27日、宮沢洋一経済産業相と面会し「東電への信頼は失われた」と強く批判した。
東電は当面の対策として排水路に浄化材を設置し、汚染水が流れるルートも変更する。堤防やフェンスで囲んだ港湾内に流れるようにして放射性物質が拡散するのを防ぐ狙いだ。27日に現地調査した福島県は東電に対し屋上にたまった放射性物質を3月末までに取り除くことを求めた。
今回の問題は今後の汚染水対策に大きな影響を及ぼしそうだ。事故を起こした原子炉には今も冷却水を注ぎ続けている。1日約300トンの地下水が建屋に流れ込んで新たな汚染水になっている。
東電は対策として建屋付近のサブドレン(井戸)で地下水をくみ上げ、浄化して海に流す計画を打ち出した。流入量を200トン近く減らせるとみて、地元漁業関係者に放出の同意を得る交渉も大詰めだった。風評被害を招きかねない今回の問題で振り出しに戻った。
安倍晋三首相は東京五輪招致に向け2013年秋、「(汚染水の影響は)港湾内で完全にブロックされている」と発言した。今回の流出は港湾外で発生、海水中の濃度上昇は確認されていないが、事故で拡散した放射性物質をコントロールする難しさが改めて浮き彫りになった。
27日の会合で広瀬社長は「(信頼が)壊れるのはすぐだが、積み上げるのは時間がかかる」と話した。不信を払拭するのは容易ではない。事故からまもなく4年。汚染水問題の出口はみえない。