兵庫県・淡路島の静かな集落に衝撃が走った。山のふもとの民家2軒で9日、5人が刺され死亡した事件は、すぐそばに住む男が逮捕された。「何があったのか」。外からの移住者が少なく、古くからの住民同士のつながりが深い地域には、驚きと不安が広がった。
現場の民家は淡路島の中部にあり、周辺には低い山の斜面に沿うように田畑が広がり、間を縫うように走る道路も車がすれ違うのがやっと。普段と変わらないのどかな朝、現場周辺には黄色い規制線が張られ、警察官が警戒に当たるなど、ものものしい雰囲気に。ヘリコプターの音も鳴り響いた。
テレビの報道で事件を知った近くの主婦(56)によると、地域には外部からの移住者は少ない一方で、住民同士が一緒になって還暦や出産を祝うなどつながりは深かった。同じ名字の人も多く、「互いに下の名前で呼び分けているほど。普段は事件が起きるような場所ではない。外に出るのも怖い」と声を震わせた。
田畑の中に瓦屋根の民家が点在しているが、商店や郵便局までは1キロほど離れ、「普段は歩く人も少ない」(地区の住民)。近所のパート女性(64)も「顔見知りばかり。近所のトラブルは聞いたことがない」と不安そうに話した。
現場近くの洲本市立中川原小では事件発生後、校舎の門扉など出入り口を全て施錠した。音楽室に集まった児童に、校長が「近所で人が刺された」と説明した。〔共同〕