政府は13日の閣議で、他人の罪を明かせば見返りに刑事処分が軽くなる「司法取引」の新設や、取り調べの録音・録画(可視化)の義務化などを柱とする刑事関連法制の改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。成立後は今夏にも公布され、3年以内に順次施行される。日本の刑事司法の大きな転換点となる。
改正するのは刑事訴訟法や刑法、通信傍受法など。大阪地検の証拠改ざん事件などの反省を踏まえ、刑事司法制度全般の見直しを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)が昨年9月、法相に改革案を答申した。
司法取引は逮捕・起訴された容疑者や被告が他人の犯罪を明かせば、検察が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりできる制度。汚職や詐欺、薬物事犯などが対象で、取引には弁護人の同意が必要だ。公布から2年以内に施行される。
うそをついて他人に罪をなすりつける行為による冤罪(えんざい)を防ぐため、虚偽の供述をしたり、偽造証拠を出したりした場合は5年以下の懲役とした。
取り調べ可視化は、殺人などの裁判員裁判対象事件と、検察の独自捜査事件が対象。全過程が記録され、取り調べに問題がなかったかなどの判断材料になる。暴力団が関係する事件など、取り調べを受ける人に危害が及ぶ恐れがある場合は記録しないこともできる。
薬物事犯などに限られていた通信傍受は対象を拡大し、殺人や強盗、詐欺、児童買春などを加える。捜査当局は、振り込め詐欺など組織的犯罪の捜査に役立つと期待している。
このほか弁護側の請求に応じて検察の保管証拠の一覧表を交付することを義務付けるほか、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪などの法定刑も引き上げる。