【ドバイ=久門武史】ケリー米国務長官とイランのザリフ外相は15日、イランの核問題の包括的な解決に向けた協議をスイス西部ローザンヌで再開する。米欧など6カ国はイランが核爆弾を製造できるようになるまでに最低1年はかかる枠組みを狙い、核開発の制限を要求している。経済制裁の全面解除を迫るイランとは詰めの攻防に入る。今月末までに枠組みでの合意をめざす。
ケリー氏は14日、協議の見通しについて6カ国とイランの間に「重大な隔たりがある」と述べ、「妥結に至るかは明言できない」と慎重な見解を明らかにした。交渉にはモニズ米エネルギー長官とイランのサレヒ原子力庁長官も参加し、技術的な折衝を急ぐ。
国連安全保障理事会の常任理事国(米英仏中ロ)にドイツを加えた6カ国が狙うのは、イランが核爆弾に必要な高濃縮ウランの製造につなげるのを阻む仕組みづくりだ。オバマ米大統領はこの期間を「1年以上」確保する考えを示し、イランの核開発について「少なくとも10年は凍結されるべきだ」と明言した。イランが既に約1万9千基保有するウラン濃縮用の遠心分離機の削減も課題だ。
イランは核武装疑惑を否定し「過大な要求には屈しない」(ザリフ氏)構えを鮮明にしている。交渉では核問題による米欧の経済制裁を全面解除するよう要求。米国は合意を守らせるため段階的な制裁解除にとどめる意向で、解除手順の設計が難航している。
米国務省のサキ報道官は13日の記者会見で、6カ国とイランが包括解決のための行動計画に最終合意した場合、国連安保理で合意を支持する決議案を採択する見通しを明らかにした。国際社会の支持を明確にし、イランに合意の履行を促す。
米・イラン双方とも国内で核協議への懐疑論がくすぶる。米野党・共和党の上院議員47人は9日、イラン指導部宛ての書簡で、イランと6カ国が核問題で合意しても米議会が承認しなければ次期政権で破棄される可能性があると警告した。オバマ政権に揺さぶりをかける意図もうかがえる。
「交渉の最終段階にたどり着くたびに米国の口調は粗野になる」。イランで国政全般の決定権を握る最高指導者ハメネイ師は12日、米議員の書簡に「政治倫理の崩壊だ」と不信感をあらわにした。ロウハニ大統領は核問題の決着に意欲を示すが、制裁の解除で一定の成果を引き出せなければ、対米交渉に批判的な国内の保守強硬派が勢いづく可能性もある。
イランと6カ国は昨年11月、2度目となる交渉延長を決めた。今年6月末までの最終合意を目指し、骨格となる枠組み合意を3月末までに終えるとしてきた。ザリフ氏は16日にブリュッセルで英仏独の外相と協議する予定だ。イランのメディアは、今回協議の期間を、イラン暦の新年を迎える20日までと伝えた。決着しない場合、月末までに再度仕切り直す可能性も取り沙汰されている。