日本語の教科書を読むアルジュン・チェトリさん(中央)=1日午前9時20分、福岡市博多区、岡田玄撮影
一人のネパール人留学生が、福岡市内の日本語学校で3日に卒業式を迎える。留学生に不法就労を強いて閉校となった別の学校から転校したこの1年。一時は絶望したこの国で、希望を抱いてはばたく。
「きょうが最後の授業です。元気に読みましょう」。1日午前9時すぎ、福岡市博多区の「いろは日本語学校」の教室。教員の呼びかけに応え、アルジュン・チェトリさん(20)は、大きな声で日本語の教科書の朗読を始めた。
「卒業するのがさみしい」と語る笑顔には、日本語を学べる喜びがにじむ。だが、この学校に移る前は笑うこともできなかった。
高校卒業後の2015年、ネパールの留学あっせん業者から勧められるまま、福岡県直方市のJAPAN国際教育学院に留学。飛行機代とは別に、手数料や1年分の授業料など120万円を業者に支払った。「いい学校だ」と聞いていた。
現実は違った。
入学するとすぐに、職員に銀行の通帳や印鑑のほか、パスポートを取り上げられ、複数のアルバイトをするよう指示された。「来年の学費のために働け」と何度も言われた。配送センターなどで土日も休みなく深夜まで働いた。睡眠時間は毎日4時間。「仕事をさせられるために日本に来たと思った」
勉強するために仕事をやめたい…