【カイロ=共同】地中海南岸屈指のリゾートを突然襲い、日本人犠牲者も出したチュニジア博物館襲撃テロ。現地メディアの報道などから武装集団と被害者、治安部隊の動きを追った。
「アラー・アクバル(神は偉大なり)」
叫びとともに、白昼の観光地に銃撃音が響いた。抜けるような青空の下、惨劇の現場は首都チュニス中心部から西に約4キロの国立バルドー博物館だ。日本人の来訪も珍しくない。
武装集団が発砲を始めたのは18日午後0時半ごろ。クルーズ船で立ち寄った観光客が、複数のバスから降りたところだった。軍服姿に加え、カラシニコフ自動小銃と手りゅう弾で武装。バスの運転手は「血と遺体以外、何も見えなかった」と凶弾の惨劇を振り返った。
観光客らは博物館内に逃げたり、パニックになったりして外に飛び出す人も。「やつらは動くものを何でも撃っていた」(チュニジア人ガイドの一人)。武装集団は館内に入っても銃乱射を続けた。この時、約200人が館内にいたという。
精鋭の大統領警護隊や私服警官を含めた約100人の治安部隊が博物館を取り囲む。防弾チョッキ姿の隊員らが銃を構え、上空にはヘリコプターが旋回、地上では、救急車がけたたましいサイレンを鳴らして走る。
極度の緊張に包まれる館内。観光客らは巨大なモザイクが飾られた展示室の隅に肩を寄せ合い、身を隠した。子供も多く含まれていた。
発生から数時間後、治安部隊が突入して実行犯の2人の男が殺された。「走れ、走れ」。警官の指示とともに観光客らは、手を取り合ったり、子どもを抱き上げたりして脱出した。
治安部隊員の一人は両腕でガッツポーズをし「勝利」を演出したが、周辺では関係者が遺体に布をかぶせる様子も見られた。別のガイドは「これは自分が知っているチュニジアではない」とうなだれた。