さいたま地検が万引きの疑いで書類送検された高齢容疑者の生活再建を支援する独自のプログラムを試行している。取り調べだけでなく、任意の面談を重ね「福祉制度が分からない」「孤独のストレス」といった動機の根幹にある日々の悩みを探り、解決に導いて再犯を防ぐ狙いだ。
法務省によると、2013年に万引きで摘発された65歳以上の高齢者は2万7953人、年齢別の割合は最多の約32.7%で、20年前の約3.7倍に増加した。
地検は内部で「起訴するだけでは防げない」と話し合い、プログラムを作った。昨年6月から10人に実施し、「問題が解消し再犯の恐れがない」と判断して4人を起訴猶予処分にした。6人は面談中だ。
家族間のトラブルやストレス、寂しさが一因のケースもあるという。刑期を終えた人などの生活を援助する「埼玉県更生保護女性連盟」(会員約5700人)と近く協定を結び、会員が定期的に訪問する支援も始める予定だ。
常磐大大学院の藤本哲也教授(刑事政策)は「見捨てない、支えるという公的機関からのメッセージで、高齢者は力づけられる。地域のサポートで居場所もできる」と評価している。〔共同〕