原油価格の見通しは先安が主流だが、一部のトレーダーは1バレル100ドル台に再び上昇するとの観測をぬぐい去れないようだ。
ごく一部のトレーダーが購入を再開したのは、2018年末までに米原油先物の指標価格が100ドルを超えると行使できるコール(買う権利)のオプションだ。コールオプションとは、特定の期間にあらかじめ決めた価格で原油を購入できる権利である。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)で株価を見つめる職員。原油安などに影響され、ナスダック指数は高水準で推移している(20日)=AP
こうして購入されたコールオプションに対応する原油の量は270万バレルに達した。3月初めに比べ、3倍近い。
こうした強気の姿勢は原油市場に広がる先安観に逆行する。(指標油種である)ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の18年12月渡しの先物価格は25日、1バレル64ドル25セントだった。原油が1バレル100ドルを超える水準で取引されたのは、先物市場で11年半ばが最後だ。現物でも14年7月以降では、みられていない。
米商品先物取引委員会の資料によると、複数の投資顧問会社は先週、WTIについてこれまでで最も「ショート」、つまり弱気なポジションをとった。米ブルームバーグの調査では、18年の(WTI)価格予測の中央値は1バレル75ドルだ。
■コールオプション、「優れた戦略になる可能性」
商品取引のアドバイザー、CTAフィナンシャルのクリス・ソープ氏によれば、引き渡し期限が年内の原油先物で先安観にかけて利益を得た商品取引のヘッジファンドが、冒頭で挙げたコールオプションを購入したという情報が流れている。
ソープ氏は、こうしたコールオプションが「極めて優れた戦略になる可能性を秘める」と指摘する。
25日に公表されたデータはシェールオイルの増産が続いていることを示し、原油価格の先安観に拍車がかかった。米国の産油量が先週、日量942万2000バレルで、1970年代はじめ以来の高水準だったのだ。
同時に米原油在庫は820万バレル増え、4億6670万バレルに達した。これは30日分の精製需要に相当する。WTI先物での原油の引き渡し場所である米オクラホマ州クッシングの貯蔵施設で、原油在庫は190万バレル増の5630万バレルとなった。
この発表後、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTIの中心限月である5月物の終値は28セント上昇し、1バレル47ドル79セントとなった。ロンドン原油市場(ICEフューチャーズ)のブレント先物の中心限月の5月物も34セント高い55ドル45セントをつけた。
石油輸出国機構(OPEC)が減産見送りを決めて原油価格が急落したため、15年12月末までに1バレル40ドルを下回ると行使できる弱気なプットオプションが登場したことをフィナンシャル・タイムズは伝えた。このオプションに対する注文も増えている。
WTIの価格は先週、6年ぶりの低水準である42ドル3セントに落ち込んだ。その後、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに慎重な姿勢を示してドルが下落したため、反発した。
By Gregory Meyer
(2015年3月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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