サウジアラビアによるイエメンの紛争への軍事介入は、この地域の強力なライバルであるイランに強烈なメッセージを送ったと同時に、この失敗しつつある国(イエメン)での多様な側面を持つ争いを全面的な内戦へ変貌させる危険性もはらんでいる。サウジは何十年ものあいだ、賄賂や分割統治、そしていつくかの懲罰的行為を組み合わせ、手に負えない南部の隣国をある程度コントロールしようとしてきた。
前列左から、会合に向かうエジプトのシシ大統領、クウェートのジャービル首相、サウジのサルマン国王、イエメンのハディ暫定大統領(28日、エジプト東部シャルムエルシェイク)=AP
イエメンは、半世紀にわたる長い争いの歴史から、統治不能な国家だとみなされてきた。オスマン帝国や大英帝国も悪戦苦闘した。汎アラブの覇者たらんとしたナセル元エジプト大統領は、1960年代のイエメン内戦で面目を失った。策略家で実力者だったサレハ前大統領はイエメンで30年にわたって最高指導者の座に君臨したが、2011年の「アラブの春」で失脚した独裁者の一人となった。
サウジはサレハ氏の後任として副大統領だったハディ氏を支持し、ハディ氏はその後二大勢力である南部のスンニ分離独立派と北部のシーア派系「フーシ」がボイコットした国民投票で大統領に承認された。包括的な権限移譲を確実にすることを目指した国民対話では、14年秋にフーシの武装勢力が首都サヌアを制圧し、大きな不信感があらわになった。ハディ氏を辞任に追い込んだ後、フーシは紅海や南部沿岸の都市アデンに勢力を広げている。
■イランの影響力拡大を警戒するサウジ
イエメンの有害さには、さらに構成要素がある。国際テロ組織アルカイダ系の地元組織が南部と東部で強力な地盤を築き上げている。過激派「イスラム国」は今月、サヌアのモスクで死者を伴う爆破事件を起こし、フーシを戦闘に駆り立てた。イエメンの武装部族を起源とする軍は、先週後半にイエメンを脱出したハディ暫定大統領の勢力と、いまやフーシと連携するサレハ前大統領派の2つに分裂している。
サウジや同国と連携するスンニ派諸国はイエメンへの介入で結集したが、これはイランによる関与への派生的な動きだ。同諸国はイランとその代理がアラブ地域で影響力を拡大したことに警戒を強めている。イランは、バグダッド、ダマスカス、ベイルートで影響力を確立した。アラブの4つ目の首都サヌアでのフーシとの連合を通じ、イランはかなたの地を支配しているようだ。