政府は31日、今後10年の農業政策の方向性を示す「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。国内で消費する食料を国産でどのくらい賄っているかを示す食料自給率の目標(カロリーベース)を現行の50%から45%に引き下げる。輸入が途絶えた場合に国内の農地をすべて使ってどの程度の食料を供給できるかを示す「食料自給力」も新指標として盛り込んだ。
食料自給率は1人1日当たり国産の供給熱量(939キロカロリー)を輸入農産物を含めた供給熱量(2424キロカロリー)で割って出す。
目標を引き下げるのは米粉や大豆などの生産でむりな計画を立てて、行き詰まったためだ。
民主党政権は2010年にパンや麺などに加工する米粉の生産を、約1000トンから20年度に50万トンに増やすなどの計画を立てた。兼業のコメ農家などにも補助金を一律で配る戸別所得補償制度を導入し生産を促す考えだった。
ところが米粉の生産は12年度時点で約3万トンどまりで、大豆やえさ用のコメの生産なども目標を大きく割り込む。自給率は39%で横ばいが続き、達成が難しくなったと判断した。一方で生産額ベースの自給率目標は70%から73%に上げた。国産品の生産拡大に偏った路線を修正し高付加価値品の育成に力を入れる。
政府はイモ類を中心に作付けすると国民1人が必要な熱量(1日に2147キロカロリー)の約1.3倍を供給できるが、栄養バランスを考慮した作付けだと必要量の7割にとどまると指摘した。英国をモデルに輸入が途絶えた場合の食生活を4パターンの食料自給力で示した。農地の再生に弾みをつける考えだ。
林芳正農相は31日の閣議後の記者会見で「コメ政策や農協の改革などを着実に実行し、若者たちが希望を持てる強い農業と美しく活力ある農村の実現に向けて全力で取り組む」と述べた。