米軍は31日、沖縄県のキャンプ瑞慶覧にある西普天間住宅地区(宜野湾市、約50ヘクタール)を日本側に返還した。2013年の日米合意に基づくもので、地元は国際医療拠点などとして跡地を活用する。普天間基地移設をめぐる政府と沖縄県の対立が激しくなる中、政府は基地負担を減らして理解を求めていく。
「跡地利用のモデルケースとなるよう必要な支援をしっかり行っていきたい」。菅義偉官房長官は31日の記者会見で、医療拠点整備を政府が後押しする考えを表明。中谷元・防衛相は「目に見える形で沖縄県の負担軽減につながる」と訴えた。
日米両政府は13年4月、沖縄本島で米軍嘉手納基地(嘉手納町など)より南にある米軍の施設や区域の返還で合意した。西普天間住宅地区の返還はこれに基づく初のケースだ。宜野湾市などは跡地に国際医療拠点をつくるほか、がんの先進医療施設や琉球大学医学部付属病院を誘致する構想を進めている。
30日には米軍用地の有効活用を目的とした特別措置法が成立した。返還後の土地のうち、自治体がまちづくりに必要と判断した民有地を取得しやすくする内容だ。翁長雄志沖縄県知事は同日「円滑な跡地利用を推進することでさらなる沖縄振興を図る」と評価した。
嘉手納以南の土地返還には、牧港補給地区(浦添市)や那覇港湾施設(那覇市)など大規模な施設も含まれる。人口が集中する県南部の大規模施設が返還されれば、那覇空港や那覇港などと一体でインフラを整備することができるため地元の期待は高い。
ただ西普天間の跡地利用には土壌汚染物質の除去や不発弾の処理、住宅の撤去が必要になる。普天間基地移設問題にどこまで寄与するかも未知数だ。嘉手納以南の土地返還は「普天間の辺野古移設を必ずしも前提としていない」(政府関係者)ためで、政府と県の対立が解消するメドは立っていない。