被爆者の高齢化に伴い、広島市が被爆体験を語り継ぐため養成を進めてきた「被爆体験伝承者」事業で新たな語り部たちが認定され、10日までに委嘱書が交付された。伝承者認定は今回が初めてで近く活動を始める。
認定されたのは30~70代の男女50人で、広島市35人、同市以外の広島県10人のほか、東京都1人、京都府1人、兵庫県2人、奈良県1人。
委嘱書交付は9日。交付した市外郭団体「広島平和文化センター」の小溝泰義理事長(67)は「平均年齢80歳の被爆者にいつまでも頼るわけにはいかない。若い世代へ平和への思いを伝えて」と激励した。
爆心地から約1.3キロで被爆し、母と弟は家の下敷きになって炎に巻き込まれ死亡したという、広島大名誉教授の北川建次さん(80)の被爆体験を伝承するのは、広島市に住む無職、土橋道子さん(73)。被爆した母が晩年、孫らに語り始めた悲惨な体験を聞き「平和のため引き継いで伝えないと」と事業への参加を決めた。
北川さんの体験を正確に伝えながら母の体験も話し、平和への思いを訴えていきたいという。
広島市は2012年度から原爆投下を直接体験していない語り部の養成のため、放射線が人体に与える影響や多数の人を前に話す時の心得、歴史などについて研修を進めてきた。〔共同〕