遺伝性難聴のマウスの内耳に遺伝子を入れ、聴力を改善させることに成功したと順天堂大などのチームが11日までに、発表した。同大の池田勝久教授(耳鼻咽喉科)は「遺伝性難聴の根本的治療法の開発につながると期待できる」と話している。
チームは難聴の原因遺伝子のうち、最も患者の多い「GJB2」という遺伝子に着目。この遺伝子が変異したマウスは、内耳で音を感じるセンサーの役割をする「コルチ器」という器官が形成されないことを発見した。
そこで遺伝子を変異させたマウスが生まれた直後、内耳にGJB2遺伝子を注射した。10~12週間後に音を聞かせて脳波を調べると、注射しないマウスと比べ、最大4割ほど小さい音でも聞き取れるようになり、コルチ器もできていた。
人は胎児期にコルチ器が形成されるため、今回の手法を使うには胎児の遺伝子検査や遺伝子治療が必要となる。チームは出生後や成長後でもこの遺伝子を使う治療が有効である可能性があるとみて、研究を続ける方針。
遺伝性難聴は約2千人に1人の割合で発症し、補聴器や人工内耳による聴力改善法がある。難聴遺伝子は150程度あるとされ、このうちGJB2遺伝子は患者の30~50%を占めるとされる。〔共同〕