東日本大震災で被災者の安否確認や避難所情報の発信にラジオが貢献したことを踏まえ、岩手県全体をカバーするエフエム岩手(盛岡市)が、地域を限定したコミュニティーFMを3カ月間、実験的に放送した。地域密着型の情報メディアであるラジオの活用強化を探るのが狙いで、県域FM局としては全国でも珍しい。
「この試みが全国に広がっていけばと思います」。2月末、岩手県久慈市の仮設スタジオ。DJまつみたくやさんは、昨年12月に始めた実験番組「くじなのだ」の最終放送をそう締めくくった。
野田中継局の電波が届く久慈市と野田村を対象に、55分間の生番組を14回にわたって放送。郷土の魅力やイベント情報を発信した。
都道府県域をカバーするAM局が中継局エリアに限定して放送する例はあったが、FM局としては異例。災害に備え、ラジオの活用強化を検討していた総務省の実証実験の一環として行った。
2月17日、岩手県沿岸部で地震に伴う津波注意報が発表されると、早速効果を発揮した。放送中の通常の県域番組を切り替え、水門の閉鎖状況や避難所の開設場所などきめ細かい情報を、野田中継局から発信した。
エフエム岩手の村田憲正社長は「県域と地域を併せ持ち、状況に応じて切り替えることができる伸縮自在な放送モデルだ」と実用化への期待を込める。総務省は今後、技術的な課題やコストを検証する方針。〔共同〕