娘の形見のタイヤにペンキをぬる瀬尾真治さん=大船渡市三陸町
大船渡市三陸町の市立越喜来小学校の校庭に11日、タイヤの遊具が設置された。津波で行方不明の北里大生・瀬尾佳苗さん(当時20)の父・真治さん(62)が、仲間とともに娘の形見でつくった。震災から5年11カ月。真治さんは「越喜来を愛した娘も喜んでいるはず」と話す。
佳苗さんは東京都練馬区で生まれ育ち、震災当時は同市にある北里大海洋生命科学部の2年生だった。動物好きで、将来は水族館の学芸員を目指していた。車イスの高齢の女性を助けようとして、津波にのまれたとみられている。
遊具設置は、教員たちの発案だった。津波で被災した同小は昨年11月に新校舎に移転したが、旧校舎で児童に人気のあったタイヤの遊具を、新校舎でも造りたいと地元の建設会社に相談した。
震災後、毎月のように同市を訪れ、この建設会社と交流のあった真治さんは、東京の自宅のベランダに保管していた娘のタイヤを使うことを思いついた。佳苗さんの小中学校の同級生の母親が2012年に開いた、埼玉県志木市の居酒屋「越喜来や」に通う常連客やボランティアも手伝うことになった。
この日、真治さんたち約25人は朝から校庭にタイヤを埋め込み、赤、青、黄色のペンキで塗った。これまでに同市で娘をしのぶ石碑の設置やハマナスの植樹をしてきた真治さんは、「またひとつ娘がここで生きた証しができた。越喜来の子どもたちに楽しんでもらいたい」と話した。(渡辺洋介)