【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は22日、ロシア国営天然ガス会社のガスプロムにEU競争法(独占禁止法)違反の疑いがあると警告した。ロシア産ガスに大きく依存する中東欧諸国のガス市場で、独占的な地位を乱用して競争を妨げたとの暫定的な判断を示した。ウクライナ問題などを巡ってEUと対立するロシアの反発は必至だ。
2012年に調査に着手していた欧州委は22日、独禁法違反を是正する手続きの第1段階である異議告知書をガスプロムに送った。ガスプロムは12週以内に反論できるが、欧州委が最終的に違反だと判定すれば、巨額の制裁金の支払いを命じられる可能性がある。同社は22日、「EUの主張には根拠がない」との声明を公表した。
欧州委は同社がブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で独禁法に違反したとみている。競争政策を担うベステアー欧州委員は22日、記者会見で「欧州市場で活動する企業は欧州企業であるかどうかに関わらず、EUのルールに基づいて行動しなければならない」と強調した。
欧州委はガスプロムが欧州域内の自由なガスの取引を損ねているとみている。天然ガスを同社から購入する顧客企業に、ガスの輸出を禁じたり、買い入れたガスを特定の地域で使うよう限定したりするなど制約を設けていると指摘した。
さらにブルガリアなど5カ国では、天然ガスの価格が生産・運搬コストに比べて過度に高いなど、価格設定が不公平な点を問題視した。ブルガリアとポーランドで、ガスプロムが絡む天然ガスのパイプライン計画への投資に応じてガスを供給していることも、市場の支配的な地位を乱用している例として挙げた。
ベステアー委員はガスプロムへの警告について「政治的ではない」と指摘。調査がウクライナ問題の前から始まっていた点などを強調した。
EUは消費する天然ガスの3割以上をロシアからの輸入に頼る。ロシアではなく、中央アジア諸国から天然ガスを運ぶパイプライン構想を描くなど脱ロシア依存を急いでいる。
欧州委は1週間前の15日に米グーグルに対し、独禁法違反だとして警告を出したばかり。昨年11月にユンケル欧州委員長をトップとする新体制が発足したのに伴い、競争政策を担う欧州委員に就任したベステアー委員は和解による解決を探った前任者に比べ、強硬姿勢が目立っている。