いなにわ氏がつくった偶然短歌のプログラム(一部)
「偶然短歌」を知っていますか? なにげない文章や風景のなかで、たまたま5・7・5・7・7となっている言葉の響き。それを見つけ、不思議な味わいを楽しむ動きがインターネットで盛んです。
ツイッターで2万7千人がフォローする「偶然短歌bot」。ネットの百科事典、ウィキペディア日本語版の文章から、短歌のリズムになっている部分を紹介している。例えば――。
《正しいが、人々が持つ宇宙への夢に対する配慮に欠けた》(「冥王星」)
《人物があなたが出した質問に答えることは期待出来ない》(「情報化時代」)
正しいが? 人物? 前後の文章は唐突に切り取られているため、かえって哲学的とも言える奥行きを出している。
これらはコンピューターのプログラムで「発見」された作品だ。手掛けたのはプログラマーのいなにわ氏(36)。2年ほど前のある日、「短歌」を機械的に探せないだろうかと考えた。プログラムに、ウィキペディア日本語版の全データを読み込ませると5千作品が検出された。
宗教系の作品にも味わい深いものがある。
《念仏で救済される喜びに衣服もはだけ激しく踊り》(「盆踊り」)
《その人の読む法華経(ほけきょう)を聞きながら眠りについて、そしてそのまま》(「櫻間伴馬〈さくらまばんま〉」)
昨夏には文筆家のせきしろ氏との共著『偶然短歌』(飛鳥新社)が刊行され、再び話題となった。いなにわ氏は「お箸で皿やコップをたたいてド・レ・ミの音階になったら『おっ』と思うじゃないですか。日常のなかに潜んでいる『芸術に近いもの』を切り取る行為なのかな」と語る。
■駅名・掲示板…身近に「芸術」
新しい概念を与えられると、自…