ギリシャをめぐるドラマの波があともう1週間続く。投資家は、ギリシャの債務不履行(デフォルト)の可能性について臆測しているが、彼らは米国と欧州の間で見方がはっきりと分かれていることに気づくべきだ。
「借金を免除せよ」と書かれた横断幕を持ってデモする人々(9日、アテネ)=AP
大西洋の東側、すなわち欧州では、政策立案者が、ギリシャのデフォルト、あるいはユーロ圏からの離脱でも悲惨な結果にはならないと示唆するのに苦心している。先週の国際通貨基金(IMF)の会合で、ドイツ当局者はギリシャ離脱の可能性はすでに市場に織り込まれており、その衝撃は抑制可能との見方を示した。
一方、大西洋の西側の米国は楽観的な雰囲気ではない。今週、米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員長は「ギリシャの離脱はギリシャ経済にとって悪いだけではない。多くのことがらが良い方向に向かい始めているときだけに、世界経済に極めて大きい、かつ不要なリスクをもたらす」と懸念を表明した。米当局者は非公式な場ではより多くの懸念を示している。
なぜこのように大西洋の両側で見方が異なるのか。そのひとつが気持ちの問題だ。ドイツなど各国は3カ月かけてギリシャの新政府と不毛な交渉を行ったが、今はそのいらだちから強硬な態度を正当化する方法を模索している。
■米、意図しない悪影響を経験
ほかの要因としてはリーマン・ブラザーズの一件がある。同社が7年前に破綻したとき、米当局者はいかに小さいショックでも手に負えない状況に発展しえるという痛い教訓を学んだ。欧州の当局者も危機を経験した。しかし、ウォール街のトレーダーとワシントンの官僚は、直接的なかたちで影響が波及していくのを目の当たりにし、精神的に傷を負った。一部の米当局者は、2008年の(リーマン・ショックの)大失敗にはいくつかの重要な点があり、それらはギリシャと極めて関連が深いのではないかと考えている。
まず、リスクというものは、十分に分析され予想されていたとしても、意図しない悪影響を回避することはできないということだ。08年を思い出してほしい。リーマン・ブラザーズが破綻する半年前にはベア・スターンズの末期的な危機があり、規制当局者たちは次の金融ショックに備えるため急いだ。たとえばリーマン破綻の前夜、当局者はクレジット・デリバティブがもたらすリスクの抑制にひたすら取り組んでいた。