エイズの治療に使われる抗ウイルス薬「アバカビル」が、ウイルスにより引き起こされる血液がんの一種に有効なことを京都大のチームが確かめ、海外の科学誌電子版に発表した。
アバカビルが抗がん作用を示したのは、成人T細胞白血病(ATL)。
高折晃史教授(血液内科)は「アバカビルの適用拡大を目指した治験を秋ごろから始め、ATLの新しい治療法開発につなげたい」と話した。
ATLはHTLV1というウイルスの感染により起きる。100万人以上の感染者が国内にいるとされ、年間の発症者数は千人前後。有効な治療法は確立されていない。
チームは、既存の抗ウイルス薬の中からATLに効果を示すものを探索。ATL患者のがん細胞を使って調べた結果、エイズウイルスの増殖を防ぐアバカビルが、がん細胞を死滅させ、がん細胞の増殖を防ぐことを発見した。正常な細胞には影響がなかった。
アバカビルは、人の細胞の中に取り込まれると遺伝子を傷つけるという問題があるが、正常な細胞では特定の酵素により除去される。一方、がん細胞では、この酵素の働きが弱まっていてアバカビルが除去されず細胞内にとどまるため、がん細胞を死滅させるという。〔共同〕