小渕優子前経済産業相(41)の関連政治団体をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は28日、支援者向けの「観劇会」などを巡り約3億2千万円の収支を記載しなかったとして、群馬県中之条町の折田謙一郎前町長(66)ら元秘書2人を同法違反(政治資金収支報告書の虚偽記入)罪で在宅起訴した。
政治団体の代表を務めている小渕氏については刑事責任を問える証拠がないとして不起訴処分(嫌疑不十分)とした。一方、折田被告のほか、政治団体の会計責任者だった加辺守喜元秘書(62)についても同法違反の罪で在宅起訴した。
小渕氏が経産相就任からわずか1カ月半で辞任に追い込まれた「政治とカネ」の問題は、元秘書らが刑事訴追される事態となった。
起訴状によると、折田被告は2009~13年、政治団体「小渕優子後援会」(群馬県)が主催した観劇会について、参加者から集めた収入1億2千万円超と、会場となった東京・明治座への支出5千万円超を収支報告書に記載しなかった。
このほか、加辺被告と共謀し、小渕氏が代表を務める「未来産業研究会」(東京都)から後援会など2団体への寄付について、実際は支出していないにもかかわらず、計5600万円を支出したと偽っていたなどとされる。
折田被告は「自分が収支報告書の実質的な責任者だった」として、小渕氏辞任と同日の昨年10月に町長辞任を表明。関係者によると、これまでの特捜部の聴取に「全て私が悪い。抗弁する気はない」などと全面的に事実を認めているもようだ。動機については「簿外支出を穴埋めするために虚偽記入した」という趣旨の話をしているという。
関係者によると、小渕氏の父・恵三元首相の時代から、各団体では地元の政治家や支援者への選挙対策費などとして領収書のない簿外支出を続けていた。このため収支報告書上の「繰越金」の額以上に実際の資金は年々減っており、ズレが広がっていたという。
これらのズレを解消するため、折田被告は観劇会の収入を大幅に少なく記載したり、寄付金として多額の支出があったかのように見せかけたりして、帳尻合わせをしていたとみられる。