【ドバイ=久門武史】サウジアラビア軍などは3日、イエメン南部アデンに小規模な地上部隊を派遣した。AP通信などが伝えた。任務は偵察または現地勢力への軍事指導との情報がある。サウジをはじめとするイスラム教スンニ派政権の中東諸国は3月下旬からイエメン領内のシーア派武装組織「フーシ」を空爆してきたが、地上部隊を送り込むのは初めて。事実ならばイエメンへの軍事介入が拡大した格好だ。
AP通信は、イエメン軍当局者の話として、サウジ主導のアラブ諸国が偵察任務のため、約20人の部隊をアデンに送ったと報じた。AFP通信は未確認情報として、アデンに派遣された部隊は約30人で、フーシ側に対抗する勢力への軍事顧問団だと伝えた。
一方、ロイター通信はフーシに対抗する組織の一つの報道担当の話として、アデンの空港周辺でフーシと戦っているのはすべてイエメン人で、サウジなどから派遣された特別な部隊は加わっていないと報道した。
サウジ軍報道官は3日、ロイター通信に対しアデンで大規模な地上作戦を始めてはいないが、引き続きフーシと戦う勢力を支援すると表明した。
サウジの隣国でアラビア半島南部にあるイエメンはスンニ派が多いアデンを基盤とするハディ暫定大統領が統治していたが、シーア派大国イランの支援を受けたフーシが軍事力で圧迫。ハディ氏を支持するサウジやアラブ首長国連邦(UAE)などはフーシへの空爆に踏み切った。ハディ氏はイエメン国外に退避しており、サウジの保護下にあるとみられている。
4月21日にはサウジなどが「フーシの重火器や弾道ミサイルを破壊した」という理由でいったん、空爆の終了を宣言したが、すぐに再開した。
国営サウジ通信によると、4月30日にはフーシによる初めてとみられる大規模なサウジ側への襲撃事件が起きた。イエメンとの国境に近いサウジ側の監視所を襲ったフーシとサウジ軍が交戦。フーシ側の数十人と、サウジ兵3人が死亡した。
衝突停止に向けサウジなどとの対話に応じる可能性についてフーシ側は「(サウジなどからの)攻撃が完全に終わった後」と主張する。一方、サウジ側は「イエメンを乗っ取る動きを阻むため実力を行使する」と説明している。フーシ側が先に攻勢をやめるべきだという立場だ。双方の言い分はかみ合っていない。