日本の通信・メディア企業ソフトバンクは、インドの新たなインターネットブームにおける最初のドットコム企業の内部崩壊を回避したように見える。ソフトバンクは、新興企業ハウジングドットコムの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)を説得して痛烈な辞表を撤回させた。CEOは辞表で、同社の投資家を「知的な能力がない」と非難していた。
モディ首相と会談する孫正義社長(左)。孫社長はインド市場に強い期待を抱いている(2014年10月)
だが、ソフトバンク(ハウジングドットコムの最大株主)の主導で5日に急きょ招集された取締役会での「率直かつ健全な議論」を受け、ラフル・ヤーダブCEOは結局辞任しないと述べた。同氏は自身の「許されないコメント」について謝罪し、今後、投資家との「完全な調和」を約束した。
孫正義氏が創業したソフトバンクは昨年12月、ハウジングドットコムの9000万ドルの資金調達ラウンドを主導した。莫大な利益を上げた中国アリババ集団に対する投資を再現することを期待し、10年間でインドハイテク企業に100億ドルを投資する積極果敢な計画の一環だ。
■「あなた方には知的能力がない」
だが、ムンバイに本社を構える若い不動産サイト、ハウジングドットコムに対する孫氏の大胆な賭けは、先週、明らかにぐらついて見えた。ヤーダブ氏が辞意を表明し、短いが軽蔑的なメールで取締役会と株主を痛烈に批判したためだ。
「あなた方にはもう、合理的な議論ができるだけの知的能力がないと思う」。26歳のヤーダブ氏は4月30日付の辞任メッセージでこう述べた。「私はこの先7日間、体制移行を手助けするために社内にとどまる。それ以降は、もう時間を与えない。だから、この間、効率的に過ごしてください」
今週に入り、この抑制を欠いた文章がオンライン上でリークされ、インドの急成長する新興企業コミュニティーの間で話題を呼んだ。インドのハイテク企業はこの1年間で、世界のハイテク投資家から過去最大の投資を呼び込み、10億ドル規模のバリュエーション(株価評価)を得ている。
5月6日、ソフトバンクとハウジングドットコムをよく知る人々はこの出来事を大ごとにせず、「情熱的」な創業者がいて、インドの電子商取引市場(モルガン・スタンレーによれば、市場規模が昨年の30億ドルから2020年の1020億ドルに拡大すると予想されている)で大きな潜在性を持つ企業にとって、ちょっとしたトラブルにすぎないと表現した。
インドのハウジングドットコム(Housing.com)のウェブサイト
それでも多くの人は、インド新興企業の間のはやり立つ野心とそれと関連するおごりの訓話として今回の騒動を解釈している。
「ハウジングドットコムの勃興と今回の出来事は、インドの電子商取引に見て取れる根拠なき熱狂と、とてつもなく高いバリュエーションを反映しているように思える」。バンガロールに本拠を構えるエンジェル投資家のシャラド・シャルマ氏はこう言う。「何らかの調整がすでに起きているべきだ」