任天堂は7日、2016年3月期の連結営業利益が前期の倍の500億円になりそうだと発表した。据え置き型ゲーム機「Wii U」向けソフトの販売拡大と、提携先のディー・エヌ・エー(DeNA)と組んだスマートフォン(スマホ)向けゲームが後押しする。ただ屋台骨の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」で販売減を抑えられず、復活に向けて視界が晴れたわけではない。
7日発表した15年3月期決算では売上高が前の期比4%減の5497億円。3DSなどの国内販売が苦戦した。営業損益は、採算割れとなっていたWii Uの原価を引き下げる会計処理の効果などで247億円の黒字(前の期は464億円の赤字)となった。黒字化は4期ぶり。円安による340億円の為替差益などで最終損益は418億円の黒字(前の期は232億円の赤字)だった。
16年3月期は円安で円建ての売上高が膨らむ。Wii Uのてこ入れやスマホゲームの投入で売上高は前期比4%増の5700億円を見込む。ダウンロードによるソフト販売を拡大し営業利益は2倍の500億円の見通し。為替差益が消えるため純利益は350億円と前期比16%減る。
「任天堂らしい利益水準に戻したい」。岩田聡社長は7日の記者会見で強調した。17年3月期に1千億円を目安に営業利益を回復させる方針だ。DeNAと組んだスマホゲームが本格的に業績に寄与する。手薄の新興国にもスマホゲームの展開を検討する。睡眠や疲労の状態を手軽に測定できるセンサーを今期中に発売する。
決算発表する任天堂の岩田社長(7日午後、大阪市中央区)
ただ真の復活には遠い。同社の過去最高の営業利益は09年3月期の5552億円。当面の目標の1千億円に達してもまだ5倍の開きがある。
任天堂の低迷のきっかけは10年ごろ。スマホゲームの爆発的な普及で任天堂が得意の「ゲーム初心者」を奪われた。収益回復にも難路が待ち構える。経営の柱だった3DSは発売から4年たち、今期は13%減の760万台に落ち込む見込み。
主力キャラクター「マリオ」にも陰りがみえる。4月末、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ」にマリオを組み合わせた商品を3DS向けに発売した。ところが早くも「販売店から返品要求がきた」(流通業者)という。
外部のソフトメーカー離れも深刻だ。任天堂のゲーム機は独自の構成のため互換性が低い。ソフトメーカーは任天堂専用のゲームを開発する必要があるがリスクを避けるため任天堂へのソフト供給を見合わせている。
岩田社長は攻めの姿勢を見せる。7日にはテーマパークの米ユニバーサル・パークス・アンド・リゾーツ(UPR)と娯楽施設の共同開発で基本合意したと発表した。施設の場所や稼働時期は未定だが人気の「ユニバーサル・スタジオ」にマリオの娯楽施設ができる可能性がある。
長年慎重だったスマホゲームに参入するなど経営方針も転換した。それを好感し株価も一時2万円台に急上昇した。任天堂はかつての輝きを取り戻せるのか。今期がその正念場となる。