静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌さん(79)の即時抗告審で、地裁が決定の根拠とした弁護側実施のDNA鑑定について、東京高裁が提案していた再現実験の実施を弁護団が受け入れる方針を固めたことが10日、弁護団への取材で分かった。14日に開かれる高裁、検察、弁護団の3者協議で決まる見通し。
即時抗告審では、弁護側のDNA鑑定の信用性が争点になっていた。検察側は、古い血痕からDNAを抽出したとする鑑定手法に関し「同じ方法を試しても抽出できず、科学的に信用できない」と主張。高裁がこれまでの協議で検証のための再現実験を提案したが、弁護団が反対していた。
弁護団によると、実験の実施条件などを示した意見書を近く高裁に提出する。鑑定の正確性を明らかにして、早期の再審開始を目指すという。
静岡地裁決定は、弁護側鑑定で、犯人が着ていたとされる「5点の衣類」に付いた血痕のDNA型が「袴田さんと一致しない」と出た結果を重視し、再審開始を決めた。
袴田さんは1966年に静岡県で一家4人が死亡した強盗殺人事件で死刑が確定。昨年3月の静岡地裁決定で釈放された。〔共同〕