欧州の航空宇宙大手エアバスの軍用機部門のトップを務めるフェルナンド・アロンソ氏は12日、同社の輸送機「A400M」が週末に墜落した事故で亡くなった同僚たちを追悼するために、次に納入される予定の同じ型の機体にフライトテスト・エンジニアとして乗り込む。
エアバスにおいて最もトラブルの多い航空機プログラムの一つであるA400Mの将来について疑問が出てくるのを封じると同時に、事故原因についてもっと詳しいことが分かるまでは計画通り生産を続けるという同社の方針を顧客の政府に示すことを狙った、アロンソ流のやり方だ。
■欧州最大、総額200億ユーロのプログラム
エアバス軍用機部門担当のアロンソ氏。軍用機「A400M」試験飛行で機体が墜落した事故を受け、記者会見を開いた(11日、スペインのセビリア近郊)=ロイター
エアバスがA400Mを失うのはこれが初めて。今回の事故は、総額200億ユーロという欧州最大の、そして10年以上前に始まってから数々の困難に見舞われ続けている防衛装備品契約に影を投げかけている。同機の納入はすでに計画より4年近く遅れており、予算は数十億ユーロ超過している。アナリストらによれば、今回の墜落で改良や調整が必要なことが判明すれば、さらに遅れが生じることもあり得るという。
トルコに納入されるはずだったA400Mは9日、試験飛行のために離陸して数分後にスペインのセビリア近郊の畑に墜落した。調査担当者が事故の原因究明に取り組んでいる。
この調査チームに近い情報筋によれば、乗員は技術的な問題を報告してからSOSを発信し、4機のエンジンを積んだ機体が墜落した。ここまでわずか数分の出来事だったという。乗員は計6人で、4人が死亡し、2人が重傷を負った。
ドイツ誌シュピーゲルは、複数のエンジンが故障したと報じた。エンジン製造を担当したロールス・ロイス主導の企業連合は、問い合わせはすべてエアバスにしてほしいと述べ、エアバスは事故調査の結果を待ちたいとしか語らなかった。
どこに問題があったのか。機体か、エンジンか、それとも乗員か。あるいは、これはいろいろな要因が悲劇的に重なった特異な事例なのか。この疑問に答えを出せるのは事故原因の調査担当者だけだ。
A400Mのプログラムがさらに遅れることになれば、当初からの顧客である7カ国は我慢の限界に達するだろう。ルクセンブルクのエティエンヌ・シュナイダー国防相は11日、地元メディアに対し、この航空機の納入をキャンセルできるかどうか検討すると述べた。ただ、それにはかなりのコストがかかりそうだとも付け加えた。