【テヘラン=久門武史】過激派組織「イスラム国」(IS)は17日、イラク中西部アンバル州の州都ラマディの全域を制圧したと宣言する声明をインターネット上に出した。ラマディは戦略的な要衝で、陥落はアンバル州の奪還を掲げるイラクのアバディ政権にとって大きな打撃となる。
ISはラマディで15日に行政庁舎を占拠して同組織の黒い旗を掲げ、17日にイラク軍司令部を制圧した。声明は、軍部隊が撤退した基地から戦車などを奪ったと強調した。ラマディの全面制圧は、昨年から米軍主導の空爆を受け、イラクで劣勢に追い込まれていたISには大きな戦果になる。
AP通信によるとアバディ首相は17日、アンバル州に展開する政府軍に持ち場を放棄しないよう命じ、イスラム教シーア派民兵に同州への進撃準備を指示した。同州はスンニ派住民が多く、シーア派主体のアバディ政権による奪還作戦は難航している。シーア派民兵を投入すれば、スンニ派住民の反感が強まる恐れもある。
イラク軍はISが支配していた北部の要衝ティクリートを3月末に奪還。アバディ首相は続いてアンバル州を取り返すと表明していたが、作戦の練り直しを迫られている。
一方、シリアではISが16日までに約2千年前の遺跡がある中部のパルミラに進撃したが、シリア政府当局者は17日、パルミラは「政府の支配下」にあると述べた。AP通信が伝えた。
パルミラ南西部には世界遺産に登録された遺跡があり、ISが破壊する懸念が強まっていた。シリア軍が守りを固め、遺跡への接近を防いだもようだ。ISは支配下にあるイラク北部で古代遺跡を相次いで破壊している。