投資家のマネーが再び株式などのリスク資産に向かい始めた。米欧の長期金利が急騰する懸念が和らぐなど市場の不透明感がひとまず後退していることが背景にある。決算発表のピークを越え企業業績の底堅さが確認されたことも、買い手の安心感につながっている。ただ、実体経済の回復の足取りは重く、緩和マネーに支えられた株高には警戒感もくすぶる。
【ロンドン=黄田和宏】19日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、終値は前日に比べ136円(0.68%)高の2万0026円と、3週間ぶりに2万円台を回復した。米市場では前日にダウ工業株30種平均が2カ月半ぶりに最高値を更新した。
欧米中央銀行の当局者が金融緩和継続を示唆する「ハト派」的な発言をしたことが伝えられ、投資家がリスクを取りやすい環境になっている。最近の米国の経済指標の不調から、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ時期が後ずれするとの見方も強まった。
シカゴ連銀のエバンス総裁は18日、スウェーデンでの講演で「金融引き締めを急ぐ理由は見当たらない」と強調した。
ドイツ国債の利回り急騰をきっかけに欧州で広がっていた市場の混乱も収まりつつある。19日の欧州債券市場では、指標となるドイツの10年物国債利回りが一時0.5%台と、1週間ぶりの低い水準をつけた。フランスやスペインなどでも全般に金利の上昇が一服している。
欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事は18日、「5~6月に量的緩和策による資産購入を適度に前倒しする」と述べた。ユーロ圏ではデフレ懸念の後退で、ECBの債券購入の継続に懐疑的な見方もあったが、短期的な市場の需給が改善するとの見方から金利低下が進んだ。ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏は「国債利回りの上昇は一巡した可能性が高い」と指摘する。
19日の外国為替市場では欧州国債利回り低下を背景に対ドルでユーロが1%強の大幅安となり、一時1ユーロ=1.11ドル台前半と2週間ぶりのユーロ安・ドル高水準となった。最近までのユーロ高を嫌気して下落基調にあった欧州株にも底入れの兆しが出ている。ドイツの株価指数DAXは19日、一時2%強上昇し、約3週間ぶりの高値をつけたほか、フランス株も2%高となった。
アジア市場でもリスク資産にマネーが向かっている。中国の上海総合指数は19日、3%高となり、7年ぶりの高値に接近した。中国政府が資本市場の開放を進める方針を示したことが好感された。