【リガ=森本学】28カ国が加盟する欧州連合(EU)とウクライナなど旧ソ連6カ国の首脳会議が22日閉幕した。共同声明は従来の政策の推進を再確認する内容に終始し、旧ソ連諸国の将来のEU加盟など、関係の深化につながる新たな進展は示せなかった。親ロシア派武装勢力がウクライナ東部の一部を支配している問題を巡っては、参加国の足並みの乱れも明確になった。
首脳会議は22日まで2日間の日程で、ラトビアの首都リガで開いた。閉幕後に記者会見したEUのトゥスク大統領は「今回の首脳会議の主なメッセージはEUと旧ソ連6カ国の連携への継続的で強いコミットメント(関与)だ」と強調した。
ところが会議後に公表した共同声明は、ロシアを経由せずに天然ガスをEUに運ぶ「エネルギー同盟」で双方の協力を強めることや、EUとウクライナの自由貿易協定(FTA)を2016年1月に発効することなどの再確認にとどまった。
むしろウクライナ問題を巡っては、ロシアによるウクライナ南部のクリミア半島の編入の評価を巡って、参加国の意見が割れた。
当初、EUやウクライナは首脳会議で「併合は不法」との認識で一致することを目指していた。しかしロシアと良好な関係を保つ旧ソ連諸国のアゼルバイジャンやアルメニア、ベラルーシが反対。最終的にはEUが併合を「不法」とみなしているとの立場を改めて示すにとどめた。ロシアを強く非難するような文言も盛り込まなかった。
EUの一部加盟国の首脳も、東方拡大の動きがウクライナ危機の一因になったと認識しており、ロシアへの一定の配慮があったもようだ。ドイツやフランスは主要貿易相手であるロシアとの関係をこれ以上悪化させたくないのが本音だ。メルケル独首相は21日「(首脳会議には)ロシアに敵対する狙いはない」と強調していた。
首脳会議はEUが旧ソ連6カ国と経済・政治関係を強める枠組みである「東方パートナーシップ」の一環。09年以降、2年ごとに開催し、旧ソ連各国の将来的なEU加盟も視野に入れて、関係を深める場となってきた。
旧ソ連6カ国のうち、EU加盟を望んでいるウクライナとジョージア(グルジア)、モルドバからは今回の首脳会議で将来の加盟への具体的な進展を期待する声が出ていた。
ウクライナとジョージアは具体策として、EU諸国との渡航ビザ免除も要望していた。しかしEU側は両国にさらなる経済改革を要求し、ビザ免除は見送った。将来的なEU加盟を巡っても、共同声明は旧ソ連諸国の欧州入りへの「熱望を認識している」と従来の姿勢を繰り返し、新たな展望は示さなかった。