日本の株式市場の規模が拡大している。東証1部の時価総額が22日、591兆円に達し、バブル経済期(1989年12月)の水準を約25年ぶりに上回り、過去最高となった。株式持ち合いの解消や上場企業の裾野の広がりといった資本市場の構造変化が海外マネーを呼び込み、さらなる企業の成長を後押しする好循環が鮮明だ。一段の市場拡大には企業や経済の構造改革が欠かせない。
22日の株式市場では日経平均株価の終値が2万0264円と2000年4月以来、約15年ぶりの高値を付けた。時価総額は株価に発行済み株式数をかけて計算する。その合計が591兆3007億円(政府保有株除く)と89年12月の590兆9087億円を上回った。
理由の一つは資本市場を活用する企業の広がりだ。日経平均は89年末の最高値3万8915円のほぼ半値。だが上場銘柄数は1165社から1883社に約6割増え、時価総額の拡大を支えた。94年上場のソフトバンクやファーストリテイリング、00年の楽天などバブル後に市場の主役となった企業も多い。
バブル経済の崩壊後、00年や07年にも時価総額は伸びた。だがIT(情報技術)関連株の実態のない株高や米住宅バブルを背景にした株高で持続しなかった。今回のバブル超えは金融危機後の構造改革をへて、日本企業に対する市場の成長期待が格段に高まったことを表す。
とくに12年からのアベノミクス相場で、日本株への期待を強めているのが海外マネーだ。海外勢は東証の売買で約7割のシェアを占め、全株式の約3割を持つ。89年には売買シェアは約1割で、4%を保有していたが、急速に存在感を高めた。
「市場の『質』が改善し、日本株を買いやすくなった」(仏運用大手コムジェストのリチャード・ケイ氏)。かつて全体の約3割だった持ち合い株の比率は約1割まで縮小。実際に市場に出回る株が増え、大株主になった海外勢の声が経営に反映されやすくなった。連結決算や時価会計といった制度充実も一因だ。
海外勢が重視する自己資本利益率(ROE)を日本企業も目標にするようになりROEを高めたり、株主還元を増やしたりする動きが強まった。株価が1株利益の何倍まで買われているかを示す株価収益率(PER)はバブル期に単独ベースで60倍を超えていたが、現在は17倍と欧米並みだ。
海外進出や技術革新で時価総額を高めた企業も多い。トヨタ自動車はバブル期の8兆円弱から28兆円強まで増やした。ファナックやキヤノンも3~4倍になった。
もっともニューヨーク証券取引所の時価総額は4月末時点で約2350兆円と東証の4倍近い。上海証券取引所は約670兆円と東証を上回る。米中は国内総生産(GDP)の伸びとともに企業が成長している。日本では企業が海外で稼いで利益を増やしてきたが、さらに企業価値を高めるには豊富な手元資金を使って成長力や株主還元を強化する必要がある。
個人の金融資産が預貯金に偏り、「株式市場が資産形成の場になっていない」(野村総合研究所の大崎貞和主席研究員)という問題も残る。税制面などで個人が株高の恩恵を受けやすい改革も求められる。