兵庫県加古川市で2004年に親族ら7人を刺殺したとして殺人罪などに問われ、一、二審で死刑とされた無職、藤城康孝被告(58)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は25日、被告の上告を棄却した。死刑が確定する。
弁護側は「(過度な被害者意識を抱く)妄想性障害の影響で、犯行時は心神耗弱状態だった」と主張。刑事責任能力の有無が争点だった。
同小法廷は判決理由で、二審での精神鑑定に基づき、被告が犯行時に妄想性障害だったことは認めたが、行動が首尾一貫していることなどから「判断能力は減退していない」として完全責任能力を認めた。
そのうえで「被害者の命乞いも一顧だにしない、強固な殺意に基づく冷酷かつ残虐な犯行」と非難。「刑事責任は重大で死刑を是認せざるをえない」と述べた。4人の裁判官の全員一致。
判決によると、藤城被告は長年にわたり、親族や近隣住民から見下されていると怒りを募らせ、殺害を計画。04年8月に自宅両隣の民家に包丁と金づちを持って侵入し、親族ら計7人を刺殺。1人に重傷を負わせ、自宅に放火するなどした。
一審・神戸地裁は09年5月、完全責任能力を認め、求刑通り死刑とした。二審・大阪高裁は13年4月、妄想性障害を認定する一方で「障害が行動制御能力に著しい影響を及ぼしたとは認められない」と責任能力を認め、被告側の控訴を退けた。
主任弁護人は「この事件の特質性を理解してもらえなかった」とコメントした。