経営不振の大井川鉄道(島田市)は28日、政府系ファンドの地域経済活性化支援機構に事業再生支援を申し込む方針を固めた。近日中に申請する見通しで、筆頭株主の名古屋鉄道も同意しており、大井川鉄道の経営から撤退する方針だ。蒸気機関車(SL)の運行で全国的にも知名度の高い同社の経営の行方は、島田市や川根本町など沿線自治体の地域づくりにも影響しそうだ。
大井川鉄道は沿線人口の減少に加え、SLに乗車する観光客が落ち込み業績が悪化。2014年3月期は売上高10億200万円と前の期から6%減収となり、最終損益は8500万円と3期連続の赤字だった。昨年には大井川本線(金谷―千頭)の運行本数を1日14往復から9往復に減らして経費削減を進めていた。
地域支援機構は有用な経営資源を持つが重い債務を抱える事業者を対象に、金融機関などと連携して事業再生に取り組む。最近では熊本バス(熊本市)など地方交通機関の再生も手がけている。大井川鉄道の申請を受けて、支援企業探しが本格化するとみられる。
名鉄は1960年代に経営難に陥った大井川鉄道を支援。76年に全国に先駆けて観光SLの運行を始めるなどで再建を果たした。現在でも1割程度出資するが、愛知県内を中心に展開する鉄道や関連事業との相乗効果が見込めず、経営課題の一つとなっていた。
名鉄は再建手続き開始について「数億円の貸し付けが傷む可能性はあるが、大きな問題にはならない。(出資を)続ける理由はない」との見方。支援に乗り出す事業者が決まれば、事実上経営から撤退する見通しだ。
沿線自治体にとって集客力があるSLを持つ大井川鉄道は大きな観光資源。運行本数削減による利便性低下で学生を含む若者の流出に懸念を示していた。経営難が深刻になったことで、行政の関与や地域づくりのあり方が問われそうだ。