30日午後8時24分ごろ、小笠原諸島西方沖を震源とする地震があり、東京都小笠原村・母島と神奈川県二宮町で震度5強を観測するなど、北海道から沖縄までの全国各地で揺れが確認された。震源の深さは約590キロで、地震の規模はM(マグニチュード)8.5と推定される。週末の夜の鉄道のダイヤは大きく乱れ、高層エレベーターの停止も相次ぐなど影響が広がった。
地震の影響で新幹線の運転が見合わせとなったことを伝える電光板(午後8時56分、JR東京駅)=共同
津波は観測されなかった。気象庁によると、日本付近が震源の地震でM8を超えたのは、2011年3月の東日本大震災(M9.0)以来。政府は30日夜、官邸の危機管理センターに官邸連絡室を設置した。
総務省消防庁によると30日午後11時20分現在、川崎市川崎区で転倒で肋骨を折る人が出るなど東京、埼玉、神奈川の1都2県で11人のけが人が確認された。
原子力規制庁によると、茨城県東海村の東海第2原子力発電所で異常は確認されていない。JR各社によると、東海道新幹線が東京―新大阪間の上下線で一時運転を見合わせ、山手線や埼京線など在来線も一部が止まった。東京電力によると、東京都足立区と埼玉県ふじみ野市の計約600世帯が一時停電した。
気象庁は「震源が深く、正確な震度の予測が困難だった」として緊急地震速報を発表しなかった。
各地の主な震度は次の通り。
震度5強=東京都小笠原村、神奈川県二宮町▽震度5弱=埼玉県鴻巣市、春日部市、宮代町▽震度4=東京都千代田区、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市など
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JR東京駅の構内には午後11時を過ぎても、電光掲示板を見上げて運行情報を確認したり、地面に座り込んだりしている人の姿が見られた。神奈川県藤沢市の自営業男性(48)は2時間以上、東海道線の運行再開を待った。「ホテルに泊まることも考えなくては……」と疲れた様子で話した。
警視庁麻布署によると、東京都港区の六本木ヒルズ・森タワーではエレベーターが一時停止し、展望台がある52階を訪れた人たちが降りられなくなった。このほか東京消防庁に「エレベーターが止まって中に閉じ込められた」といった通報が少なくとも8件あった。
ビル設備管理会社「三菱電機ビルテクノサービス」(東京・荒川)によると、同社が管理する首都圏のエレベーター約6千基が揺れを感知して自動停止した。技術者を派遣し、復旧を進めた。
震度5強を観測した東京都小笠原村・母島で雑貨店を営む前田豊さん(47)は「ゆっくりとした大きな横揺れが1分ほど続き、どこまで強くなるのかと怖かった」。店の棚からはシャンプーなどが落ちたという。
同じく震度5強の揺れに見舞われた神奈川県二宮町の酒屋の女性店員(51)は隣接する自宅で家族と夕食中、小さな揺れがだんだんと大きくなり、急いでテーブルの下に潜った。「天井の照明が左右に大きく揺れ、恐ろしかった」と振り返った。