年金情報の流出問題は社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の用途を広げる法案や、安倍政権が成長戦略に位置づける労働法制などの国会審議に波紋を広げている。
参院内閣委員会はマイナンバー法案と、ビッグデータの有効活用を促す個人情報保護法改正案を4日にも採決し、翌日の参院本会議で成立する見通しだった。2日の理事会で野党が「国民の情報管理への関心が高まった」と審議続行を求めた。与党も採決の提案自体を当面留保する方針だ。
日本に住むすべての人に番号を割り振るマイナンバー制度は2016年に運用が始まる。法案はマイナンバーを18年から預金口座に適用できるようにするもので、民主党なども賛成の方向だ。しかし、年金情報の流出問題を踏まえ、与野党とも慎重対応に傾いた。成立時期は来週以降に先送りされる見込みだ。
与野党は主に衆院厚生労働委員会で原因究明や再発防止を審議する。3日には集中審議を行う。
同委では企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくす労働者派遣法改正案を審議中だ。成立阻止をめざす民主、共産両党は攻撃材料を得て「流出問題の真相が明らかになるまで通常の法案審議は行わない」と強気の構えをみせる。
派遣法改正案の採決が終わらないと次に控える法案の審議が始まらない。時間ではなく成果に賃金を払う脱時間給制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)を新設する労働基準法改正案などは待ちぼうけを食らっている。年金の支給水準を小刻みに下げていく公的年金制度改革法案は、国会提出が一層困難となった。