大阪市の橋下徹市長が市庁舎から職員組合を退去させたのは違法として、組合側が市側に処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2日、大阪高裁であった。森義之裁判長は市側に計350万円の支払いを命じた一審・大阪地裁判決を変更、計250万円に減額した。一審は2012~14年度分を違法としたが、控訴審は12年度分のみを違法とした。
橋下市長は就任後の12年7月に市議会で市労使関係条例を成立させた。条例では「組合活動への便宜供与を禁止する」と規定しており、市側は処分の根拠としていた。
森裁判長は条例が成立する前に出した12年度の処分について「庁舎内で(組合による)政治活動が行われる可能性を封じる目的だった」と指摘。退去までの期限も短く、「著しく妥当性を欠くものと認められる」と賠償責任を認めた。
一方、市議会で成立した条例について組合側は「憲法違反」などと主張していたが、森裁判長は「直ちに憲法などに反するということはできない」と判断。成立後の13、14年度は組織改編で「庁舎内に余剰スペースがほとんどなかったと認められる」として、「必要なスペース確保のためで違法とは言えない」と組合側の主張を退けた。
一審は条例に基づく処分について「違法行為を適法とするために適用されるなら、憲法28条などに違反して無効」と判断したが、見直した。
処分の取り消しを求めていたのは自治労系の市労働組合連合会と傘下の5組合の計6組合。
市労働組合連合会の黒田悦治書記長は判決後の会見で「市は速やかに正常な労使関係を回復することを求める」とし、大阪市の上田隆昭総務局長は「市の主張が一定認められたと理解している。判決文を精査し、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
組合の庁舎退去を巡っては自治労連系の2組合も一審・大阪地裁で勝訴、市側が控訴している。