【パリ=押野真也】イラクとシリアの過激派組織「イスラム国」(IS)への対応を協議する各国の閣僚級会合が2日、パリで開催された。米国主導の有志連合に加わる24の国や機関の代表者が参加し、ISとの戦闘の最前線に立つイラク軍への支援を強化することで合意した。ただ、今回の会合でも戦況を好転させる具体策は打ち出せず、手詰まり感も出ている。
仏政府は今回の会合について「イラクの危機を解決するためだ」と説明し、イラクのアバディ首相も出席した。米からは、サイクリング中の事故で負傷したケリー国務長官に代わり、ブリンケン国務副長官が出席。イラク軍への支援を強化し、外国人戦闘員がイラクに流入するのを防ぐための措置を講じることでも一致した。
会合後の記者会見で、ブリンケン氏はイラク軍を支援するため、対戦車ロケット砲を供与する考えを示した。イラクではISが中西部の要衝ラマディを制圧。イラク政府はラマディの奪還作戦を展開している。ブリンケン氏はイラク政府の対応を支持し、支援する考えを示した。
会合に先立ち、イラクのアバディ首相は「イラクを支援する話はたくさんあるが、実際(に実行されるもの)は非常に少ない」といらだちを隠さなかった。ISの伸長は「国際社会の失敗」だとも述べ、武器の供与や地上部隊の派遣など、一層の支援を求めていた。
イラクへの支援強化を表明した背景には、イラク政府からの有志連合に対する不信感を払拭する狙いもありそうだ。ただ有志連合は空爆作戦や後方支援、武器供与などの形でイラク軍を支援するものの、IS掃討のための地上部隊の派遣には慎重姿勢を崩していない。
有志連合が一枚岩でないことも対ISで有効策を打ち出せない一因になっている。トルコやカタールなどはシリアのアサド大統領の退陣を求める一方、アサド政権と協力関係を築いてISに対抗すべきだとの意見もある。今回もこうした意見の対立は解消せず、今後のIS掃討作戦に影響を及ぼす可能性もある。