【アテネ=竹内康雄】欧州連合(EU)が求める財政緊縮策への賛否を問うギリシャの国民投票が5日に投開票され、反対票が賛成票を大きく上回った。チプラス首相は同日夜、緊縮反対の「民意」を盾にEUなど債権団との再協議に入る考えを示した。ユーロ圏は7日に首脳会議を開き対応を協議するが交渉は難航が予想される。ギリシャの財政破綻やユーロ圏離脱のリスクも高まっている。
5日、ギリシャの首都アテネのシンタグマ広場で、開票の途中経過を聞いて笑顔を見せる反対派=AP
ギリシャ内務省によると、開票がすべて終わった段階で反対が61.31%、賛成が38.69%。投票率は62.5%だった。
チプラス首相は「有権者は勇気ある選択をした」と勝利宣言した。「『ノー』の声はギリシャの交渉での発言力を増す」と述べ、強気な姿勢でEUや国際通貨基金(IMF)など債権団との交渉にのぞむ方針を表明した。バルファキス財務相は「6日以降、EU側と一致点を探りたい」と語った。
チプラス政権は「民意」を武器に債権団側から譲歩を引き出す戦略をとるとみられる。年金制度や付加価値税制の改革といった緊縮策の緩和や、債務減免などが焦点となりそうだ。
緊縮策受け入れを期待していた債権団側にとっては、予想外の結果となった。ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は「ギリシャの未来にとって非常に残念」との声明を出した。EUはチプラス首相への不信感を募らせており、ただちに再交渉が始まるかどうかは見通せない。ドイツのガブリエル副首相兼経済・エネルギー相はギリシャ政府との新たな交渉は「非常に想像しにくい」と語った。
国民投票という公式な手続きを経て出されたギリシャの世論は尊重せざるを得ず、欧州側は対応の練り直しを迫られる。フランス大統領府は5日夕、オランド大統領とメルケル独首相が6日夜にパリで会談すると発表した。ユンケル欧州委員長は6日、欧州首脳や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁らと電話協議する。ユーロ圏は7日にブリュッセルで首脳会議を開き、今後の交渉方針を決める構えだ。
ギリシャはEUなどから支援を得られなければ、14日の円建て外債(サムライ債)の償還、20日のECBが保有する国債償還を乗り越えられず、債務不履行(デフォルト)になる見込みが強い。
ギリシャの銀行の手元資金も近く枯渇するとみられる。ロイター通信によるとギリシャ中銀は民間銀の資金繰りを支えるため、ECBに「緊急流動性支援(ELA)」の上限を拡大するよう要請した。
国内のユーロが枯渇すれば国民生活や銀行を守るために事実上の自国通貨を発行せざるを得ず、ユーロ圏からの離脱につながる可能性がある。スロバキアのカジミル財務相は5日夜、ギリシャのユーロ離脱が「現実的なシナリオになった」と述べた。