台風18号の影響で関東や東北で記録的な豪雨が降り続いた10日午後、茨城県常総市三坂町の鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な水害に見舞われた。常総市は「12人が行方不明になっている」と明らかにした。ほかにも、人が流されたとの情報が複数あり、安否の確認を進めている。県によると浸水地域は約32平方キロで、約6500棟の住宅があり、一部は流失した。警察、消防、自衛隊、海上保安庁は同日夜までに、取り残された周辺の住民ら400人以上をヘリコプターなどで救助した。警察庁によると午後11時現在、約690人が救助を待っている。
鬼怒川(手前)の堤防が決壊し、濁流で浸水した市街地(10日、茨城県常総市)
栃木県警によると10日夜、土砂が流れ込んだ鹿沼市の住宅で行方不明となっていた女性(63)が見つかり、その後、死亡が確認された。
国土交通省によると、鬼怒川の堤防は高さ約4メートル。決壊は午後0時50分ごろで、幅は約140メートルにわたった。決壊地点は8月28日の点検で異常はなかったが、10年に1度起きると想定される洪水に対応できないとして、改修を計画していた。
国交省はポンプ車を投入して排水作業に当たるほか、2週間かけて堤防の応急工事をする。鬼怒川の堤防決壊は1949年8月に栃木県で発生して以来。
政府は10日午後、茨城、栃木両県の大雨に関する関係閣僚会議を開催。安倍晋三首相は「事態は重大な局面にある」と述べ、全力で対策に取り組むよう指示した。茨城県は常総、古河、結城、下妻、筑西の5市と八千代、境の2町に災害救助法を適用した。
常総市で救助を要請しているのは、地域交流センターで孤立状態にある約550人と、ショッピング施設の屋上に取り残されている約100人のほか、住宅の住民ら。
気象庁は10日午前までに、栃木、茨城両県に特別警報を発表。11日も関東から北日本の広い範囲で激しい雨が降る恐れがある。防衛省は大雨被害で自衛隊が救助したのは404人と発表した。警察庁によると、9県で21人がけがを負った。21人のうち、栃木県日光市で一時心肺停止となった男性は意識不明の重体。〔共同〕